鼠径部痛(グロインペイン) 筋膜との関連

胸腰筋膜腰・股関節の障害
胸腰筋膜

参考文献:船戸和弥先生の解剖学ページ
リンクはこちら(胸腰筋膜)
    こちら(鼠径靭帯の下・腸恥隆起)

参考文献:腰背部痛における胸腰筋膜の関与
PDFのリンクはこちら

参考図書:グレイ解剖学アトラス(※2021年9月に新しいのが出ました!!解剖学書迷っているかたはこの機会に)

参考図書:ネッター解剖学アトラス(私はネッター派)

鼠径部の痛み

まずは船戸先生の解剖学テキストをご覧ください。
リンクはこちら

船戸先生の解剖学テキスト(鼠径部の下)

鼠径部の痛みで浮かべるのは、腸腰筋が鼠径靭帯の下を潜り、腸恥隆起の外側の部分で炎症を起こしたり、その前方に存在する滑液包が炎症を起こすなど、【腸腰筋由来の痛み】が真っ先に浮かぶかもしれません。

グロインペインと呼ばれる鼠蹊部痛はスポーツの分野で言えば、サッカー選手でよく知られる症状で、当院にもよく来られる症状の一つです。

腸骨下腹神経(紫)腸腰筋(オレンジ)滑液包・鼠径靭帯(緑)

そのほかに、腸骨下腹神経は鼠径部付近の皮膚を支配しているため、第1腰椎か腎臓により神経が圧迫することがあるため、泌尿器科の受診が必要となる場合もあります。

鼠径ヘルニアをお持ちの方も注意が必要な場合があります。

ということから、我々の対応できる範囲でのキーワードは「腸腰筋」「腸骨下腹神経」「鼠径靭帯」となります。

鼠径ヘルニアも軽症であれば対応できる場合がありますが、手術した方でもその付近の症状をお持ちの方や、鼠径ヘルニアの手術既往は体質を見る場合にとても重要な所見となります。

軽症の鼠径ヘルニアも含めて、腸腰筋と腸骨下腹神経・鼠径靭帯の3つのキーワードと重なるのが筋膜である【胸腰筋膜】と【腸骨筋膜】です。

サッカー選手に多い鼠径部の痛み(グローインペイン)は関節の機能的運動学の視点も重要ですが、今回は、割愛します。
以前に、記載した症例等はこちら

股関節の痛み 動力学変換の視点から見た症例

妊婦の股関節痛 鼠径部の痛み 症例

股関節の痛みの多様な原因 前回と同じ症状でも原因は異なる

【胸腰筋膜】と【腸骨筋膜】

以前にも大腿筋膜 Facia lataについてこの筋膜から大腿部の障害について紹介しました。

筋膜と筋間連結からみた大腿部の張り

胸腰筋膜
胸腰筋膜

参考文献:船戸和弥先生の解剖学ページ
リンクはこちら(胸腰筋膜)

腸骨筋膜 Facia iliaca
腸骨筋膜は腸腰筋の前面を被い、腰椎と腸骨量とから起始する。腸骨筋膜の外側部は鼠径靭帯と結合するが、内側部は腸恥隆起から鼠径靭帯に緊張して、腸恥筋膜弓をなし、鼠径靭帯の下にできる筋裂孔と血管裂孔の境界を作る。

船戸先生 解剖学テキスト 腸腰筋周辺 リンク

筋裂孔と血管裂孔の境界を作るというのも臨床上かなり重要ですが、そこを深掘りするのは今回は割愛し、「鼠径靭帯と結合する」という部分を深掘りしたいと思います。

船戸先生 解剖学テキスト 腸腰筋周辺
リンクページはこちら

胸腰筋膜については、【腰背部痛における胸腰筋膜の関与(PDFのリンクはこちら)】をご参照ください。

ヒトの胸腰筋膜は、後葉・中葉・前葉の3部に分けられる・・・・・・
中葉は、外腹斜筋、腹横筋と内腹斜筋を腰椎王突起に付着させる強靭な構造を持っている。・・・・・
外腹斜筋、腹横筋及びない腹斜筋は側腹壁を形成する筋で、これらの筋の停止腱膜は前方では腹直筋を包む腹直筋鞘となり、前腹壁の正中部で左右が結合し白線を形成している。また、下端では、外腹斜筋腱膜は上前腸骨棘から恥骨結節に張る鼠径靭帯となっている。鼠径靭帯は、下方では大腿の筋群を包む大腿筋膜に連続している。

腰背部痛における胸腰筋膜の関与(PDFのリンクはこちら

文献から得た知見

胸腰筋膜の中葉が外腹斜筋を介して、鼠径靭帯とつながり、腸骨筋膜の外速も鼠径靭帯とつながっていることがわかります。

胸腰筋膜の中葉は、腰部の「脊柱起立筋」と「腰方形筋」を隔てる筋膜であり、腸骨筋膜が覆っているのはその名の通り「腸骨筋」です。

主に体幹の屈曲伸展動作と関与する脊柱起立筋と、側屈動作に関与する腰方形筋、股関節の屈曲外旋の腸骨筋、体幹の回旋側屈の外腹斜筋の運動機能が失調すると、鼠径靭帯にもストレスがかかることがわかります。

鼠径靭帯はそのまま大腿筋膜Facia lataと結合するので、以前に小腰筋と大腿筋膜との関連についてお話しした内容と重なりますが、腰部の機能制限は下肢の方へと波及していくので、足の症状であっても腹圧を評価することはかなり重要となります。

また、胸腰筋膜の三層全て腰椎と結合しているため、腰椎が変異してしまうと容易にその三層全てに張力を作ってしまい、筋膜を障害することに発展してしまいます。

筋膜を評価する上でそこに付着する筋肉の作用を検査するとともに、腰椎の関節構造の変位を読み取り、筋膜に与える影響も加味して、治療ポイントを推察することが大切です。

タイトルとURLをコピーしました