人工股関節置換術は術後も満足度が比較的高いと言われており、活動性も術前より高くなる症例が多く、スポーツ活動に参加しやすいとまで言われています。
参考文献:Participation in sports after hip and knee arthroplasty: review of literature and survey of surgeon preferences
スポーツの中でもウォーキング、ゴルフ、水泳のようなLow impact sportsに関しては、多くの医師が推奨しているとされています。
参考文献:Return to athletic activity after total hip arthroplasty. Consensus guidelines based on a survey of the Hip Society and American Association of Hip and Knee Surgeons
今回の症例も股関節の手術後も数年に渡りウォーキングを続けてきたがこの一年、調子が悪いが病院では、手術後の経過は問題ないと言われ、当院への来院に至る。

症例:70代 両側人工股関節置換術
症例:70代 女性
右側の股関節の変形が強く、先に右側の人工関節置換術をうけ、その後すぐに左側を同様に手術、そして腰部の脊柱管狭窄症に対する椎弓からの除圧術も受けている。
手術後2年ほどは歩行距離も伸びていたが、ここ一年長く歩けず、スピードも落ちてきた。
症状は、
・左足が短く感じる。
・右足の開脚、腿上げで腿付け根につり感
・まっすぐ歩いているつもりがよろける
・足先の痺れ
などがある。
※症例についての考察した動画はこちら
歩行動作を見ると左足を踏み込む際に、体が縮こまり、右足を踏み込むと背が伸びるように伸び上がる。
左足を接地する瞬間に体が左へと流れて行っています。


歩行と骨盤
一般的に知られている異常歩行に「トレンデレンブルグ歩行」というのがあります。
立脚期に外転筋(主に中臀筋)が働き、反対側の骨盤を持ち上げ、片足の上に重心を運ぶことで軸を安定させます。
この中臀筋が働かなくなると、反対側の骨盤が落ち、軸が取れないために立脚期に縮こまるような感じとなります。

こちらも足の長さなどの違和感が生じやすい異常なのですが、今回は別の問題による症状でした。
仙腸関節と足の長さ
仙腸関節は、寛骨の前傾があると、大腿骨の臼蓋が下方に移動するため、足が長くなり、寛骨の後傾すると、大腿骨の臼蓋が上方に移動し、足が短くなります。

症例の考察

今回の症例は、左寛骨の後傾していたので、それによって左足が短く感じていたようです。
ただ、この方の場合は、骨盤全体が左に傾いていることによって大腿骨の臼蓋は一見左右対称に見えてしまい、実際の足の長さが左右差がない状態となっていました。
歩行時には、仙腸関節が動くことによって、寛骨の前傾・後傾を遊脚と立脚で使い分けることで、バランスよく軸を取れるようにしています。
遊脚時に左の寛骨が前傾しないといけないタイミングで、後傾側に動き、足の接地から立脚する際に後傾がより強くなり、足が短くなる、そういう状態だったようです。
難しい症例には、それなりに治療が難しくなるポイントがあり、読みを間違えるとなかなか改善に至らないことがあります。
今回は、脊柱管狭窄症も併発しているので、そこがより難しくさせていますが、最初よりもかなり軽快に歩けるようになったのでよかったです。

