尿管結石 腰痛と膝の痛み

腎臓と鼠径部・大腿部の神経不定愁訴
腎臓と鼠径部・大腿部の神経

「尿管結石」をご経験の方は、「腰痛」と関連づけられることは体験からもよくわかっているかと思います。

引っかかった結石を排泄するために起こる「強い尿管の蠕動運動」が痛みの原因で、腎疝痛・尿管疝痛と呼びます。

今日は、一般的に知られる腰痛のみならず、膝の痛みとの関連について症例をもとにお話ししたいと思います。

尿管結石の後発部位

尿管における解剖学的狭窄部
尿管における解剖学的狭窄部

解剖学的狭窄部として、構造上、結石が引っかかりやすい尿管の位置は

  1. 尿管が腎臓の下端を乗り越える場所(尿管の腹部)
  2. 尿管が精巣あるいは卵巣動脈・静脈の後ろを通過する場所
  3. 尿管が外腸骨動脈・静脈の前を通過する場所
  4. 尿管が膀胱壁を斜めに通過する場所

参考図書:
プロメテウス解剖学アトラス 胸部/腹部・骨盤部 医学書院 P.301

ネッター解剖学アトラス 第4版 南工堂 P.341(中古が出回っており大変お得ですよ)

薬を服用していても、結石が排出しづらい場合には、この当たりの調整も効果が期待できます。

腎臓も尿管も後腹膜臓器と呼ばれる、腹膜の後ろにあるため、腰椎と緩くではあるものの接続するため、腰部の治療もそれなりに効果が期待できます。

神経の走行と今日の症例

腎臓と鼠径部・大腿部の神経
腎臓と鼠径部・大腿部の神経

50代 男性

主訴:左膝の腫れと痛み・左骨盤部の腰痛

既往歴:直前に左尿管結石(腎盂部) 尿管を広げる薬を服用

膝の水腫が強く、一度整形にて穿刺を行い40cc近く水を抜いています。

水が抜けてもまだ膝の屈曲は直角の90度すら曲がらずに当院を受診。

第2腰椎の左下方変位によって大腿神経が圧迫され、大腿部の筋肉が過緊張をしていたようでした。

第2腰椎(+全身)の調整で1回目105°まで屈曲が改善、立位での膝の屈伸は90°が限界。
2回目の治療で110°まで屈曲が改善、立位での膝の屈伸で95°まで改善。
3回目の治療で120°まで屈曲が改善、立位での膝の屈伸もほとんど正常まで改善。

そして治療前にはまだあった結石も、施術が効いたのか、薬が効いたのか、相乗効果か、検証することは誰もできませんが、運よく無くなっていました。

腎臓由来の鼠径部の痛み

腎臓のすぐ後ろには、第12肋骨と腸骨鼠径神経並びに腸骨下腹神経があり、その神経の障害のために、腎臓が炎症により腫れたりすると鼠径部に関連痛を感じることがあります。

今回の症例では、腎盂のところにおける尿管結石の既往がありました。

プロメテウス解剖学アトラスによると

ほとんどの場合、腎臓は冠状面(前頭面)に対して平行ではない。腎臓への血管と尿管が出入りする腎門は、前内側を向いている。また腎臓の上端は下端よりもやや内側を向き、腎臓は正中に対してやや傾いて位置する。よって腎門もまた、やや下方変位向く。

プロメテウス解剖学アトラス 胸部/腹部・骨盤部 P.291

またどの書籍に書いてあったか忘れてしまいましたが、

腎盂での尿管の引っ掛かりは、腎臓の下端と腎門の向きによる尿管のカーブが強いと起こりやすい

どの書籍に書いてあったか思い出せず・・・

つまり、腰部の変位によって腎門の向きや尿管の走行にストレスが生じることで結石が引っかかりやすい構造を作ってしまうこともあり得ることがわかります。

症例からの考察

膝を痛める前の尿管結石の既往から第2腰椎の左屈は生活習慣からすでに起こっていたことが予想できました。

左の腎臓が腰椎の変位によって、反時計回りに回転することで腎門は通常よりも上方を向きがちになり、そのため、腎盂のカーブがキツくなり結石の排出が思うようにいかなかったという仮説が立ちます。

第2腰椎の傾斜は、大腿神経を刺激することになり大腿部の緊張を起こし、結果膝の痛みへと増悪してきました。

腰椎の治療によって膝の痛みも取れ、尿管結石ももしかしたら排出しやすい角度になったのではと考えています。

前に記載した胃の痛みと足の痺れの関連についてはこちら
胃の痛み・足の痺れ 神経障害と内臓

腰椎と胃腸・不妊の考察についてはこちら
不妊治療 左卵巣の腫れ 十二指腸と第一腰椎の調整の関連

前回記載した鼠径部痛も今回の腸骨下腹神経や腸骨鼠径神経が関連します
鼠径部痛(グロインペイン) 筋膜との関連

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