ハムストリングスの痙攣 足のつり 肉離れ 支配神経がポイント

総腓骨神経障害 症例 腰・股関節の障害
総腓骨神経障害 症例

陸上競技やサッカーのように、股関節を屈曲し、膝を伸展するスポーツにおいて多いとされるハムストリングスの損傷(肉離れ)ですが、スポーツ選手から一般スポーツ愛好家など様々な方が当院においても来院されます。

スポーツ障害に対して、「その張っている筋肉をほぐそう」という安易な考えはとても危険である証拠の1つとして代表されるのがこのハムストリングスの損傷ではないでしょうか。

理由というのは、ハムストリングスは異なる神経によって支配されているため、神経系の機能が低下していることが肉離れを含めた損傷の背景になっていると言われています。
参考論文”Biceps Tendon Rupture of the Lower Limb

今回は症例を交えて、この機能解剖をご紹介します。

ハムストリングスの神経支配

最近では、視認しやすい解剖学アプリが流行っており、この点が無視されやすいのでアプリだけでなく文字による説明がしっかりと書かれている解剖学書を読むことの大切さに気付かされます。

解剖学アトラス 坐骨神経
解剖学アトラス 坐骨神経
C Anatomy 坐骨神経
C Anatomy 坐骨神経

この2つの画像は、有名な解剖学アプリですが、脛骨神経と総腓骨神経は太ももの後面では坐骨神経として一まとまりになっています。

これは間違いではなく正しいです。大腿上部においては、脛骨神経と総腓骨神経は共通の被膜に包まれ、一本の太い神経のようになっています。

ですので、大腿の下部に至るまでは、脛骨神経と総腓骨神経は分岐せずに一本の坐骨神経として描かれます。

大腿二頭筋短頭と総腓骨神経
大腿二頭筋短頭と総腓骨神経
大腿二頭筋長頭と脛骨神経
大腿二頭筋長頭と脛骨神経

ハムストリングスの外側である大腿二頭筋は長頭と短頭に別れますが、実は支配神経が異なり、発生学的にはハムストリングス内側の半腱様筋・半膜様筋・外側の大腿二頭筋長頭に対して、大腿二頭筋の短頭は別の筋群であると研究がされているくらいです。
参考文献”霊長類大腿二頭筋支配神経の比較解剖学

大腿二頭筋長頭・半腱様筋・半膜様筋は脛骨神経に支配され、大腿二頭筋短頭は総腓骨神経に支配されていますが、仙骨の外側である梨状筋下孔から出た時には皮膜に包まれ一本の坐骨神経として走行していますので、神経の障害による協調運動の障害は考えにくいです。

なので今回のように大腿二頭筋の長頭と短頭で機能障害を起こす場合として多いのが、まだ共通の神経となる前の腰椎と仙骨・寛骨(仙腸関節)のレベルで障害を受けていることが考えられます。

仙骨神経叢
仙骨神経叢

仙骨神経叢は背中側から上・下殿神経→総腓骨神経→脛骨神経という順番で走っていますので、背側から障害を受ければ臀筋と大腿二頭筋短頭の障害され、腹側を障害されれば半腱様筋・半膜様筋の障害の可能性が高まります。

大腿二頭筋腱遠位付着部の解剖

実際の症例に進む前に、大腿二頭筋腱の遠位部における解剖も踏み込んで勉強していきたいと思います。

大腿二頭筋は複雑な構造をしており、2つの別々の支配神経を持つ筋肉(長頭と短頭)から構成されています。

大腿骨骨幹部の後面から起始した短頭成文は、大腿骨遠位の後外側面で、坐骨結節から起始した大腿二頭筋長頭腱に収束・合流します。

長頭の腱性部は、腓骨近位部の後外側から外側縁に沿って外側側副靱帯LCLの外側に付着します。

また担当の成分は、腓骨茎状突起の外速でLCLの内側から前方にかけて、そして前脛骨筋筋膜に収束します。

さらに大腿二頭筋腱遠位部は、後外側複合体PLCの一部として膝関節の安定化にも寄与しています。

参考論文:”Isolated Tearing and Avulsion of the Distal Biceps Femoris Tendon During Sporting Activities: A Systematic Review

2013年に発見された前外側靭帯ALLを含む前外側複合体ALCと合わせて後外側複合体PLCとの膝不安定に対する研究が盛んになってきています。
前外側靭帯ALLの論文はこちら”Anatomy of the anterolateral ligament of the knee

この話を聞けば、腰部の神経機能の促通がいかに膝の安定に寄与しているかお分かりいただけたかと思います。

参考図書:関節外科ー基礎と臨床 2023年3月号 特集:肉離れ


症例:外側ハムストリングスの痙攣

総腓骨神経障害 症例
総腓骨神経障害 症例

症例は、一般マラソンランナーの太ももの痙攣・足の攣りです。

先ほどの点から総腓骨神経と脛骨神経の協調運動障害がハムストリングスの機能障害に対するポイントであることがわかりました。

そういった視点で腰椎のMRIを見ながら触診と治療にあたってみます。

神経支配領域となる下部腰椎の触診をしてみると第5腰椎は左側が前方・右側が後方に回旋しています。

モーション・パルペーション(動きの触診)でも右の腰椎が前方に硬く、左の腰椎は前方に動きやすかったです。

MRI画像もまさにその通りで、画像の右側が患者さんの左側になりますが、第5腰椎の下関節突起が前方に回旋し、椎間孔を狭くしています。

その前方にある椎間板も画像の右側である患側(左)の後方にヘルニアを起こしており、椎間孔が狭くなっています。

今回の場合は、腹側・背側両方から第5腰椎の神経を刺激しているため脛骨神経・総腓骨神経両方への障害が考えられますが、この辺りで神経を刺激すると被膜に包まれている臀部から大腿部後面よりも神経症状も差がで安くなります。

そういったことから全体的なハムストリングスの機能障害というよりは、外側ハムストリングスに限局した機能障害を起こしていたのだと推測しました。

触診と画像から得られた第5腰椎を中心とした調整を行うことでまたランニングを再開することができました。

しかし、画像を見るに他にもいろんな問題点が分かりますので今後もいろんな不調に悩まされそうですが、1つでも改善が見られて良かったです。

今後も技術の向上とともに、文献や最新の医学も取り込みつつ良い施術が提供できるよう精進を続けていきたいと思います。

にしむら治療院 ブログをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

タイトルとURLをコピーしました