最近は分離症や椎間板ヘルニアなど脊柱管狭窄症の症状が強くなってきた方をよく拝見します。
色々治療を試されてきたけれどよくならず、こちらに来院されてすぐに効果が出ており大変喜んでもらっています。
「正しい触診は、正しい効果をもたらす」という当初からの信念通り触診をひたすら研鑽してきた成果を実感できる日が続いています。
未だ良くならない方にも成果が出るよう、今回も勉強していきたいと思います。
分離症や脊柱管狭窄症、神経根症に対しての治療計画を画像からも読み取るれるようになってきたのは最近最も大きい成果かと思います。




今日は、分離すべり症と特に関連づけて、腰痛予防や腰痛リハビリのための運動が悪化をもたらす場合について勉強していきます。
「水泳」は体に良いというイメージがありますが、実際のところはそんなことはなく、腰痛の発症は他のスポーツに比べて多いことをご存知の方はいらっしゃるでしょうか。
確かに浮力が働き、腰椎椎間板には負荷の少ない環境であり、腰痛予防で水泳や水中運動を行うことも多いのも事実です。
では、なぜ腰痛が悪化するのでしょうか。
水泳により脊柱管狭窄症が悪化した方が色々と治療を取り組んできたが良くならず、当院で劇的に改善したのでその症例検討交えて復習していきます。
水泳と腰痛
今回参考する論文は競泳などに関するものではありますが、水泳の動作から推察しているものも多く、一般の方にも応用できる考え方です。
Hangaiらは4,667人の大学生を対象に調査を行い、腰痛の既往がない学生に対して、腰痛の既往があるスポーツ選手で最もオッズ比が高かったのはバレーボール選手で、水泳も高かったことを報告しています。

古くから、水泳と側湾症の関係については指摘されていて、アスリート全体での構築性の脊柱側湾症の発生率(Cobb角20度以上)が1.6%~2.0%であるのに対して、水泳選手では7%と高く、水泳選手では背筋の左右の不均衡が生じ、放置すると側弯変形が生じやすくなる。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3512101/
アスリートと腰痛や競技特性、また腰痛発症年齢などのさまざまな論文から10代の水泳選手の腰痛については、捻挫(椎間関節障害)や筋・筋膜性腰痛など一時的な疼痛が多く含まれており、しかしながら改善が得られないと構築性の側弯へと移行しやすいことを臨床スポーツ医学の研究誌で推測していました。
これらからも腰痛患者に水泳が悪化させるかもしれないのはご理解できるかと思います。
特に分離症などの椎間関節性の機能が低下している方であればなおさらリスクが高いのはご理解いただけたかと思います。
もちろん腰痛の経験効果も証明されています。
痛みの緩和や身体的健康度の向上、柔軟性や筋力の向上、体脂肪率の低下など身体的および機能的な効果が認められています。
とても参考になる論文がたくさん引用されていますので、興味のある方はぜひ学会誌をご購入ください。
次に実際にどんな動作でどのような部分に負担が生じるのか探っていきます。
水泳動作と腰痛
水泳動作から腰痛発症を分析した知見は「整形・災害外科2020年の10月号」に書かれている種目別腰痛が参考になります。
M2plusの整形・災害外科雑誌のリンク:https://www.m2plus.com/content/1257
水泳力学シミュレーションを用いた研究において、クロール泳が下位腰椎の変位を高めることを明らかにし、クロールでのキック動作の繰り返しが椎間板変性に繋がる可能性を指摘されています。
臨床では当たり前なのですが、股関節の伸展が硬ければ、下位腰椎に伸展の力がかかるため腰痛発症とキック動作は関連します。
ここで別の視点で注目するのが、バタフライよりもクロールでの腰痛の発症が多いという研究です。



いくつかの論文で腸腰筋の筋緊張増加が腰椎の伸展を強制し腰痛を発症させると報告しています。
キックの動きで腰椎の変異が増大することが椎間板の変性に関与するとされるが、ではなぜ、クロールの方がわずかではあるが腰痛発症が多いのか。
それについては、胸椎(胸郭)の回旋柔軟性の低下による腰椎の回旋に負荷がかかり椎間関節性の腰痛を来す場合があります。
側湾症との関連もこの辺りから予測できてきます。
この辺りで分離症と関連の高い、椎間関節の負荷が見えてきました。
実際に分離症と水泳を比較した論文を読んでいきます。
水泳と分離症
分離症の一般の発生頻度は5.9%で、水泳選手では18.2%(日整会誌)、別の論文では10.3%(整形外科学会)とその頻度は一般人と比べて多い。



その理由として腰椎の屈曲進展を繰り返すことと、左右非対称性の体感の回旋や側屈の無駄な方向の動きが椎間関節に対しての負荷を高め、分離症へと発展することが予想できます。
さて、ここから分離症と脊柱管狭窄症を患う方に対して、どういったことに気をつけながら、そしてどういった治療を行えば改善が見られるか考えていきます。
症例:分離症・脊柱管狭窄症
水泳をした後から左の仙腸関節部の痛みと右足の痺れ、両足のつりがひどくなり、整形外科で分離症と脊柱管狭窄症と診断。
いろんな治療院をめぐるも改善が見られなく、当院へと来院。
触診時に、腰椎の回旋が強く、右前方変位、左後方変位。
分離滑り症との関連から、右腰椎が大きく前方に滑っていることが予想され、そこで神経を刺激していると思われます。
水泳での回旋動作が非対称であったことが予想できます。
持参されたMRIを拝見し、確かに矢状面で右側の方が前方滑りが大きいことがわかったため、右は前方へと押さないように、側方からアプローチをしてくこととしました。
アキレス腱の緊張が強く、腰椎の治療による神経の促通ができているか、足関節の緊張と反射を確認しながら行うと、腰椎の回旋を軽減さえると足関節の機能が改善し始めました。
痺れもその場で抜けたが、前屈時に右足の痺れが再現されます。
これが水泳時の屈曲伸展動作での増悪と考えられます。
前屈時に起っている回旋変位の調整と骨盤の傾きを調整すると前屈時の痺れも消失。
その後も足のつりは全く出なくなり、痺れもかなり弱くなりました。
これから少し運動を加えながらの経過観察となりますので、水泳と腰痛と同じように運動刺激時に治療で改善した箇所を注意しながらさらに改善しなくてはなりません。
水泳の論文等はとても勉強になりました。