視覚の身体制御メカニズム

眼球の写真不定愁訴
右に注視

眼球の水平運動の特殊な神経機構

患者さんA
患者さんA

横に引っ張られる様なめまい感で悩んでいます・・・

こう言った症状の方に注目しなければならないのが「眼球の水平運動の問題」です。
そんな患者さんの中には、病院で「眼振」を指摘されている方もいらっしゃいます。
眼振のメカニズムは多様ですので、その一部をご紹介したいと思います。

 衝動性眼球運動

「衝動性眼球運動」と呼ばれる眼球運動の高速な動きは、急に音がした際に目をその方向に動かすときや、本を読む際に文字と文字を高速に飛んで視点を移動する時に使われています。

この衝動性眼球運動のうち、水平な動きに関与する筋肉は主に外直筋によって行われています。

おそらく、人以外の動物が、視野の外側から視覚に入ってくる外敵に気付くための神経機能として存在していた能力なのではないでしょうか。

滑動性眼球運動と衝動性眼球運動

外直筋の神経支配 外転神経

外直筋は、脳神経のうち外転神経が支配しており、上斜筋を除く他の外眼筋は、動眼神経が支配しています。

外眼筋神経支配作用
外直筋外転神経眼球の外転運動
上斜筋滑車神経眼球の内方回旋のほか、下転および外転作用
下斜筋動眼神経外方回旋作用のほか、上転および外転作用
内直筋動眼神経眼球の内転運動(鼻側に向ける)もっとも強い
上直筋動眼神経眼球を上転
※眼球の内外転の位置によって作用が変わる
下直筋動眼神経眼球の下転
※眼球の内外転の位置によって作用が変わる
眼球の機能と神経支配
眼球運動の機能
眼球運動の機能

眼球の運動機能から見て重要なポイントがいくつもありますが、割愛させていただいて、今回は外直筋と外転神経の衝動性眼球運動について説明します。

外転神経核

前述した様に、眼球において外転筋は外転神経という固有の神経が支配しています。
動眼神経核から外転神経核までは距離があり、内側縦束によってつながっていますが、その距離は長いために外転神経核の単独での機能障害が存在します。

この外転神経核は、水平衝動性眼球運動のスイッチの様なバーストニューロンというのを持っており、さらに、目が凝視しているときにのみ活動するオムニポーズニューロンを持っています。

この二つのニューロンによって衝動性眼球運動と視線を高速で動かした後に注視する(文字を読む様な)ことができます。

水平の動きと垂直の動きは、別の神経回路によって行われており、ここが視覚からくるめまいの複雑さを作り出しています。

そしてこう言った機能の理解が”なかなか良くならなかっためまいが改善する知恵“となります。

外直筋・外転神経の機能障害

よく起こる外直筋や外転神経の機能障害の原因は、近眼です。

距離の近いところに焦点を置く場合、人間の目は内直筋を収縮させて、いわゆる”寄り目”をします。

解剖学的には【輻輳運動】と呼びます。

簡単に想像ができるかと思います。

近いものをずっと見てしまえば、この水平性衝動運動を担う外直筋は機能しづらくなり、周辺視野は狭くなります。

衝動性眼球運動は、【注意】と関係があるため、制限されている方向に対する注意が低下します。

スポーツの分野でいえば、広い視野による動体視力が低下します。

近眼に加えて、さらにスマートフォンの様にどちらかの手で操作する場合、正中よりもその手の方に目は移動します。

つまり片目は内直筋を強く収縮させ、もう一方は外直金を収縮させ続けます。

さてこの後、正常に水平性眼球運動は行えるでしょうか。

ターゲットを追従する滑動性眼球運動についての説明は今回は割愛します。

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