妊婦はお腹が大きくなるにつれて、腰痛はつきものですが、人によっては歩行障害に至るケースがあります。
特に坐骨神経痛や恥骨の痛みによって足に体重をかけることができないような場合に歩行障害となります。
今回、太腿内側に張りを感じ始め、さらに腹痛も強く感じてきた後に、恥骨の痛みによって歩行障害を呈した方の症例をご紹介します。
※妊婦の方は、まず産婦人科にて切迫早産の危険がないかなど、主治医の意見をまず聞いてください。今回は、第一子において逆子の治療していたり、出産後の腰痛や歩行の治療を継続して行っていた方だったため、産婦人科の受診前に治療をしました。
現病歴
ヨガや運動を日常的に行っていた方で比較的「健康」という言葉に合う方で、高齢出産にはなるものの、母子共に順調だったと言って良い部類に入る方でした。
妊娠5ヶ月になり、お腹の大きさが目立つようになってきた頃から、右の太腿の内側に痛みと冷え(痺れ)を感じるようになりました。
先月の産婦人科では順調であったが、腹痛を感じる頻度も多くなって産婦人科の受診の予約を週末に控える中、足の痺れが強くなり、歩行障害となる。
主訴
- 恥骨痛(真ん中よりやや右かな?というくらい恥骨中心に近い)
- 腹痛(下腹部)
- 右足に力が入らず体重を乗せられない
検査(触診)
腰椎は左側弯
回旋は右前方、左後方だったので、側弯は側屈変位だとわかります。
L3が左後上方変位(右前下方)
仙骨も右前方変位の正中仙骨稜の右回旋変位
腸骨は右前方でかつ外方回旋していた。
考察
腸骨の前方回旋によって右側恥骨が左に押し入るような力がかかり、体重をかける際に恥骨に負荷がかかり痛みが出ている様子。
また坐骨も回旋をするため、閉鎖神経などの神経障害によって内腿に張りや痺れを関していた。
そもそもはお腹が大きくなる中で第一子を抱っこする際に右脇で抱えることが多かったというポイントからも納得の、腰椎の右前方回旋と右側屈の変位。
まさに抱っこ中の子供が右の腰部にのしかかっているような姿勢に固まっていた。
治療
妊婦のため、うつ伏せはできないため、座位、側臥位(横むき)と仰臥位(仰向け)にて治療をおこなった。
まず座位で、第3腰椎の側屈変位と回旋変位をとることで、右前方にかかる力(腹痛を強くさせるストレス)を取り除いて歩行をチェック。
→歩行自体は問題なくできたが、右肩が下がっており、おそらくすぐに痛みが再燃することが予想でき側臥位で胸椎の治療も併せて行った。
再検査
第9胸椎の右屈曲変位+右下方変位(通常屈曲変位は、右側が上方に変位するが、上方にも可動性制限があった)
再治療
胸椎の調整と仙腸関節の調整を側臥位で行い、再度歩行を行うと肩も起きた状態で歩行もスムーズになりました。
第一子妊娠時に、逆子で苦労していたこともあり、腰部や骨盤の状態から今回もその懸念があるため、腰の治療と同様に子供の経過も見ることになっています。
週末は子守もあるため、週一で産婦人科での経過を確認しながら、腰部の治療を継続。経過は良好。