腰椎の手術後でも再発した足の裏の痺れ

「脊柱管狭窄症に対する手術」という大きな枠組みで捉えるとネガティブな印象を持たれる方が多いのかと思います。

私自身は、そんなネガティブな印象はあまり持っていません。

これが医療系に進路をとった20年前であれば今とは違ってネガティブな印象であったことは事実です。

そんな過去から現在、なぜ手術に対してネガティブに思わないのかと言えば、近年は手術による後遺症、いわゆるFailed back surgery syndrome (FBSS) 脊椎手術後疼痛症候群 はだいぶ少なくなってきたからかと思います。

2011年に発表された論文では、腰椎術後の10~40%の発生率でFBSSがあったとされています。
参考論文:Failed back surgery syndrome Chin-wern Chan Philip Peng
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21463472/

2011年の段階で10人中4人が術後に脊椎疼痛に悩まされるという事実はネガティブにならざる終えません。

こんな衝撃的な論文が執筆されるよりも少し前の2009年に日本ではある研究会が発足しています。
それは日本MISt(Minimally Invasive Spine Stabilization)研究会です。
「患者のためにいかに侵襲の少ない脊椎手術を安全に提供できるか・・・」という思いのもと、侵襲性の低い手術が進化しています。

低侵襲性手術を実現する一因となった脊椎内視鏡下手術の進化・深化はそういったインシデント件数にも現れており、2021年の内視鏡化脊椎手術の総インシデント件数は全手術件数の2.5%と先ほど紹介したFBSSの論文からかなり減少しています。
参考論文:脊椎内視鏡下手術の現状-2021年1月~12月手術施行状況調査・インシデント報告集計結果-
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202302229525503912

ただ、その前年よりも1%増加していることからも普及してくるともう少しデータは悪くなるのかもしれません。

自分自身がより細かい治療へと技術の進化とともに、勉強している内容もより細かくなっていく中で、脊椎疾患においてはこの内視鏡化手術の概念や術式はとても勉強になります。

脊椎のどの部位は神経的に過敏ではないのか、どういった方向へと脊椎を動かせば神経の除圧ができるのか、など外科学会の最新治療からの知見は我々徒手療法においても活かせる情報ばかりです。

今回は、手術後に一度寛解した下肢の痛み痺れが、術後数ヶ月で再発した方がすぐに改善した症例をご紹介したいと思います。

参考図書:

臨床整形外科 医学書院 2023年9月号 脊椎内視鏡下手術の進化・深化

Monthly Book Orthopaedics 2025年4月 脊椎治療低侵襲化への私の試み 全日本病院出版会
https://shinryobunko.co.jp/item-detail/1238999

整形・災害外科 2025年6月号 
安全な脊椎・脊髄手術のための術中脊髄モニタリング
https://kanehara-shuppan.co.jp/magazines/detail.html?kubun=05527&code=055272025060&hakkou_nengetsu=202506&pc_mode_set=1

などなど

症例:

60代 女性

右下肢に強い痛みと痺れが出現し病院で「腰椎滑り症による脊柱管狭窄症」と診断

内視鏡化脊椎手術によって脊柱管及び椎間孔を広げたことによって、術後下肢の痛みと痺れが消失
それから3ヶ月後特に変わったことはしてはいないが、足の裏に痺れが出現し、強い痛みではないため耐えられるということと、手術によって神経の通り道は現在も確保されているということで経過観察となる。

左術前・右術前後 脊柱管狭窄症

黄色矢印部分の椎弓板及び黄色靭帯を切除したのかなと画像的に思えました。(患者さんから渡された資料には細かい切除部分の記載はありませんでしたので予測です)

患側の右側の椎間孔が健側よりも狭い様にも見えますが、CT画像や他の断面では椎間孔が完全に詰まっているわけではないので、椎間孔障害・神経根障害は疑わしいものの、ここからきている、というまでには根拠は乏しいかもしれません。

評価と治療

術前の症状と範囲は狭い、そして程度も軽いものの再現性の高さからは、同等の部位での神経症状と予測しても良いかと思いました。

そのためL4/5での考えられる神経障害を予測しました。

手術後直後に撮影されたCTからも確認できたのですがL4が患側の方のすべり具合が若干高いことがわかります。

黄色:肋骨突起 青:乳頭突起

黄色で囲った部分の肋骨突起の位置が患側でのL4が、検測の部分よりも前にあることがわかります。

青色で囲った乳頭突起の方は左右どちらもL4が前方に向いていてその差はあまり感じられません。

つまり、棘突起回旋よりも椎体回旋していることが考えられます。

椎骨の変位
椎骨の変位

側弯については治療院ホームページの「治療コラム 側弯」をご参照ください

触診結果 

L3右後方変位

L4右前方変位

L5右後方変位

治療と効果

L5右前方モビライゼーション

L3右前方モビライゼーション

L4は右前方変位なので、L5とL3の治療中に乳頭突起コンタクトで前方に逃げないように固定をすることがポイントでした。

2回目来院時の数日前から痺れが軽減し、3回目の治療時にはほとんど痺れがなくなっていました。

今回CTとMRIのデータは2回目の来院時にお借りできたため、初回と2回目の最新時は触診だけで状態を予測し治療しました。

2回目の治療後に画像を確認し、初診時に予測した神経障害が事実であるという確信に至ります。

むしろ最初から画像を見ていてもどこをどのように治療したら良いかは想像できませんでした。

画像だけに頼っていてもダメだし、感覚だけに頼っていても神経の障害ポイントをかなり詳細に捉えることは難しいです。

ただどんな技術を使おうとも、正しく状態を捉え、正しく治療を行えば、難しい症例もきちんと効果が出てきます。

一般的な滑り症と今回の滑り症の違い

今回の症例の滑り症は、一般的な滑り症とかなり違いがあります。これは画像ではあまりわからないかもしれません。

かつて症例報告した滑り症はこちら

滑り症による脊柱管狭窄症

レントゲン画像滑り症
レントゲン画像滑り症
滑り症 脊柱管狭窄症 手術後CT
滑り症 脊柱管狭窄症 手術後CT

上記のレントゲンはL3とL4の滑り症、今回の症例CTがL4の滑り症という部位の違いはありますが、根本的に治療において重要な点が異なります。

こちらは普段触診している背面からの3Dモデルを編集したものですが、L4以外の上下の腰椎が右側が後方変位をしているため、一見すると右側が前方に滑っているどころか、後方に後弯しているように見えるのです。

ただ先ほどから見ている側面からの画像だと明らかに第4腰椎は前方に滑っています。

これは、治療において気をつけなければいけないのが、足の痺れがある腰が張っているからと言ってマッサージや腰の矯正のように前方に強い力をかけると第4腰椎はより前方に滑ってしまいます。

なので、先ほど治療の部分でご説明したように、第4腰椎には前方への力がかからないように固定しながらその上下の腰椎を前方に動かさなければならない、というかなり慎重な治療が必要になります。

ここの部分が画像だけ見ても治せないパターンの脊柱管狭窄症でした。

ますます難しい症例が来られていますが、今回のように慎重にかつ、いろんな評価から真実に近づいていきたいと思います。

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