座るのが辛い 坐骨の痛み 深部臀部症候群 Deep gluteal syndrome(DGS)

IFI 坐骨-小転子間距離 画像右が患側(左足) 左側が健側(右足) 腰部脊柱管狭窄症
IFI 坐骨-小転子間距離 画像右が患側(左足) 左側が健側(右足)

【座るのが辛い 坐骨の痛み 深部臀部症候群 Deep gluteal syndrome (DGS) 】

※news:臀部に挫滅組織が認められた仙腸関節障害及び深部臀部症候群の症例を動画にまとめました

Introduction 序論

深部臀部症候群(Deep Gluteal Syndrome : DGS)という言葉を知っている人はどれくらいいるでしょうか。梨状筋症候群、陰部神経痛、坐骨神経痛、近位ハムストリングス障害、坐骨大腿インピンジメント(IFI)などはよく見る症例ですが、それらを含めて「深部臀部症候群」という病名があることは、私自身も数年前まで聞いたことはありませんでした。
ここ数年は、「座っていて臀部・鼠蹊部・陰部が痛む」という陰部神経痛・閉鎖神経障害や、臀部後面の引っ掛かりや痛みを起こす坐骨大腿インピンジメント(ischiofemoral impingement : IFI)の難治例に対して治療をさせていただくことが多く、知見を深めていく中でこのDGSについての論文を多数拝見することになりました。


今日は、「坐骨神経のスナッピング現象」と「陰部神経痛」の症例をまとめながら、DGSについて深く勉強していきたいと思います。

最初は坐骨神経がスナッピングを起こしているのではなく、いわゆる弾発股の腸腰筋や腸脛靱帯のスナッピングかと思いましたが、明らかにそれとは異なり、やはり坐骨神経のスナッピングようでした。

過去の弾発股に対するブログはこちら

弾発股 腸腰筋の機能解剖から見た仙腸関節との関連

腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)の走行
腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)の走行

画像をクリックしても過去の弾発股のブログに飛べます。

症例:坐骨神経のスナッピング 屈んだ時 足を振り出した時

坐骨神経のスナッピングというのは、アスリートでは陸上、サッカー、ダンス、バレエ、フェンシング、ボクシングという方々、つまり足を前後によく動かす競技でよく拝見する症状です。

ただ今回は普段運動はあまりされないOLの方でした。

症例:

ぎっくり腰は一年に一度くらいは経験していたが、前回のぎっくり腰の後から、腰の痛みは落ち着くも、しばらく太ももの裏が張る、いわゆる坐骨神経痛が残っていた。

徐々にその痛みが増してきて座って仕事しているのが辛くなってきた。

針や、整体、カイロプラクティック、AKA、swing石黒法、ブロック注射など様々な治療を行ってきたがあまり効果がなく、次第に陰部の方まで痛みが広がってきた。

教わったストレッチやトレーニングを行うもあまり効果はなく、ただその時に気づいたのが、太ももの裏を伸ばすストレッチをしようと屈むと、お尻のところでバチんと何かが弾かれるような音と、その瞬間に太ももの裏にビリビリと痛みが走る現象に気づく。

次第にそれは、歩行動作のような足を降り出す瞬間にもたまになるようになり、痺れはアキレス腱の方まで伸びていくようになった。

私が以前に記載した陰部神経痛の症例を読んで来院に至る。

過去に書いた陰部神経痛についてのブログはこちら

陰部神経痛(肛門痛)と仙腸関節障害

触診:

右の仙結節靱帯の伸長による圧痛

仙骨右側下部の圧痛(後仙腸靱帯・仙結節靱帯付着部)

坐骨結節内側の鈍痛

坐骨結節外側の鋭利な痛み

大腿骨後面の圧痛

MRIによる画像診断で坐骨大腿インピンジメント(IFI)は存在していませんでした。

むしろ患側の方が広いくらいでした。

画像の左患側(右足) 右健側(左足) 坐骨-小転子間距離
画像の左患側(右足) 右健側(左足) 坐骨-小転子間距離

ちなみに実際にIFIで来院されていた方の画像がこちらです。

画像の右側(左足)が患側ですが、一般的にIFS(小転子-坐骨結節間距離)15mm以下が陽性ですが、この方はそれに含まれています。

IFI 坐骨-小転子間距離 画像右が患側(左足) 左側が健側(右足)
IFI 坐骨-小転子間距離 画像右が患側(左足) 左側が健側(右足)

この画像所見が、実際に歩行という動きの中で起こっている現象まで捉えられないため、触診と動的触診がとても役に立ちます。

可動域SLR↓↓

股関節の屈曲↓↓

股関節の外転↓↓

股関節の内転↓

股関節の内旋↓

股関節の外旋↓

※歩行時やSLRのような動作時に起こっていた坐骨神経のスナッピングは徒手検査時には起こりませんでした。ただ歩行時や太ももの裏を伸ばしながら前屈すると確かにバチんとスナッピングしている様子がわかります。

患側を振りだした時に、骨盤の傾斜が入り(トレンデレンブルグ歩行)、その結果、瞬間的にIFIの状態になっている様です。

下記は坐骨神経の坐骨結節による障害の資料(この資料では左足が患側になっています)です。

IFIと骨盤の傾斜
IFIと骨盤の傾斜

IFIの理学検査としてロングストライド歩行テストというのがあり、まさにこの方の症状である歩行時に坐骨神経のスナッピングが起こる現象は坐骨大腿インピンジメント(IFI)が生じているのがわかります。

今回は背臥位での撮影では、坐骨-小転子間距離は狭くなかったが動作中に起こっていました。

画像所見的にはIFI陰性であったことが、逆に難しい症例となったのだと思います。

IFIについて書いた過去のブログはこちら

座っていられない 仙腸関節障害 坐骨周辺の痛み

この坐骨神経のスナッピングですが、実は数年前に拝見していたアスリートが同様の症状で、うまく改善できませんでしたが、ここ一年は同様の症状で来られる方々に対して安定して結果が出るようになってきました。

効果の出た治療が「坐骨」だったのです。

このIFIの画像診断で坐骨結節と小転子の距離を比較し、さらに大腿方形筋を比較することがポイントになっています。

先ほどのMRIでも指摘した距離は狭小とされているので仙腸関節の機能検査と坐骨の変位を読み解けば症状は改善できます。

仙腸関節の治療というのは、坐骨の治療を用いることは確かにあるのですが、坐骨の緊張を読み解きながら仙腸関節を調整することがキーワードだったのです。

その後、同様の症状のある方々に対して、安定して結果を出すために参考にしたのがDGSの論文です。

深部臀部症候群 Deep Gluteal Syndrome (DGS)について

DGSについて

“Deep gluteal syndrome is defined as a non-discogenic sciatic nerve disorder with entrapment in the deep gluteal space: a systematic review
深部殿部症候群(DGS)は、深部殿部スペースでの絞扼を伴う非椎間板性の坐骨神経障害として定義される:システマティックレビュー
このレビューでは、DGSの疾患定義は以下の3つの要素から構成されることがわかりました
1) 非椎間板性であること、(2) 坐骨神経障害であること、(3) 深部殿部スペースでの神経絞扼があること。”

引用論文:
Surgical Management of Deep Gluteal Syndrome Causing Sciatic Nerve Entrapment: A Systematic Review

この「非椎間板性であること」は40代後半になってくると椎間板変性が伴っていることが多く、椎間板症とDGSを両方疑いながら診療にあたることが大切になってきます。

実際に私の体は、腰椎の治療を先に行わなければ、仙腸関節や坐骨の治療、いわゆる深部臀部症候群DGSのための施術の効果が現れにくいというケースは臨床をやってきても少なくありません。

神経障害では、坐骨神経障害だけでなく、坐骨結節の内側や前方を走る陰部神経障害、閉鎖神経障害も起こりうるため、論文によっては「坐骨神経」と限定はしていない様です。

下記画像が陰部神経と坐骨神経の走行の違い

Alcock管
Alcock管

“ Nerve entrapment syndromes as a cause of pain in the hip, groin and buttock

股関節、鼠径部および殿部痛の原因としての神経絞扼症候群

「梨状筋症候群」と呼ばれる特定の疾患のように、いくつかの疾患では、初期の記述から病態生理の理解が変化しており、現在では殿部および/またはハムストリングに関連するあらゆる原因がこの診断に含まれてしまうことが多くなっています。

私たちは、局所症状の発生機序の性質を論じ、しばしば説明される症状は坐骨神経自体ではなく、他の構造物の圧迫による可能性が高いことを指摘します。

さらに、この症候群の発生における梨状筋の肥大や神経の解剖学的変異の役割についても疑問視する必要があります。

私たちは、この症候群を観察されるすべての現象を含めるために「深部殿部症候群(deep gluteal syndrome)」と改称することを提案します。“

引用論文:
Nerve entrapment syndromes as a cause of pain in the hip, groin and buttock

ちなみに坐骨棘による陰部神経障害が疑われた方のMRIがこちら

仙腸関節と坐骨神経・陰部神経
仙腸関節と坐骨神経・陰部神経

症例の治療とDGSの論文を読んでの気づき

ハムストリングスの攣り・肉離れ、坐骨神経障害、または陰部神経障害の様な坐骨周囲の問題の中に、実は多くの坐骨の機能障害があることがわかってきました。

坐骨結節に付着するハムストリングスである大腿二頭筋長頭・半腱様筋・半膜様筋・そしてそのすぐ内側に付着する大内転筋は坐骨の状態によって坐骨神経を刺激しうることがわかります。

仙腸関節周囲での坐骨神経の障害や椎間板変性の様な腰椎レベルでの神経障害によってハムストリングスの障害が起きることがほとんどであるのは間違い無いとは思いますが、ごく稀に坐骨の変位によってハムストリングスが坐骨神経を刺激しうることも理解できてきました。

“ 半膜様筋(SMB)と大腿二頭筋長頭(LHBF)は坐骨結節の外側に起始し、レチナキュラムのような密な結合組織によって、SMBおよびLHBFの腱は坐骨結節に固定されていました(図1Bおよび図9A–C)”

引用論文:Anatomical Relationships of the Proximal Attachment of the Hamstring Muscles with Neighboring Structures: From Ultrasound, Anatomical and Histological Findings to Clinical Implications

おそらく、今回の症例では、このSMBの坐骨結節付着部において、歩行時の寛骨の傾斜も重なり、坐骨神経がスナッピングしていたのでしょう。

仙腸関節とハムストリングスの緊張
仙腸関節とハムストリングスの緊張

仙腸関節障害とハムストリングスの肉離れについてのブログはこちら

太ももと足の付け根の張り 肉離れ? 仙腸関節の状態から読み解く

今まで見てきたハムストリングスや坐骨周囲の神経障害において、画像所見から立体的に坐骨の問題を捉えることができる様になってきました。

坐骨の調整による仙腸関節へのアプローチと応用も経験できて、難治性の仙腸関節および坐骨神経への治療を再び経験できました。

最近は全国から治療に来られる様になり、ますます難しい症例と出会っていますが、前進を可能にしてくださった患者様に感謝いたします。

治療院詳細

にしむら治療院
東京都港区芝5−27-5山田ビル503
駐車場1台
Tel:03-6435-2437
website:https://hari.space/index.html
web予約:https://hari.space/contact.html


アギトス鍼灸整骨院
さいたま市中央区下落合1013-1スピカビル2階
駐車場4台
Tel:048-708-2011
website:https://www.agitos.jp/index.html
web予約:https://www.agitos.jp/contact.html

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