股関節の障害については「仙腸関節による臼蓋の向き」や「大腿神経の機能」が極めて重要であると言うことは何度か話してきました。
1つ目の妊婦の症例で紹介した大腿神経の障害は腸腰筋や四頭筋を支配している大腿神経が機能障害を起こすため、腰椎の側屈変位によって大腿神経が障害されると、足が持ち上がらなくなるといった状態でした。
2つ目の動力学変換と股関節は、足を動かす方向に対する関節面の向きが関与することについて説明しました。
そして今回は、腰椎の屈曲変位による腸腰筋の障害についてご説明します
腸腰筋の機能
腸腰筋(大腰筋)は腰椎の前面と大腿骨の小転子に付着しており、股関節の屈曲、外旋、外転を行うとされています。
大腿神経に支配されているため、妊婦の方の歩行障害でご説明したように、大腿神経の障害によって機能障害がよく起こります。
しかし今回は大腿神経というよりは筋肉そのものの収縮不全のようでした。
筋収縮について

上記は、以前にハムストリングスの障害について説明した時の画像です。
筋肉は腱と腱が筋繊維の滑りによって近づくことで力を発揮します。
腱の向きと筋繊維の方向が重要であると以前に説明しました。(下記のタイトルでご覧になれます)
症例:腰椎椎間関節と腸腰筋障害
腱と腱がある程度の距離を保っていると、収縮がしやすくなります。
伸張性収縮がパワーを発揮しやすいのがその理由です。
今回ご紹介する症例では、階段を上がる(腿上げをする)際に、足が重く力が入らないという症状でした。
仙腸関節や腰椎の側屈変位、および回旋変位を取り除き、ある程度の可動域と筋力は改善したのですが、もう一歩というところがなかなか最後取れませんでした。
座り仕事が多く、その姿勢は猫背そのもの、体を起こす治療を行う際に、大腿神経と関連のある第3腰椎が屈曲変位をしていることに気づきました。
側屈変位や回旋変位もその周囲にあったのですが、左右差を主に見ていく方法だと屈曲伸展の状態は見落とすことが多く、最後のすっきりしない違和感はここで解決できました。

腰椎の屈曲変位というのは、図のピンクで示したように、椎骨がうなづいているような状態です。
股関節が屈曲していくほど、腸腰筋の繊維は短くなり、筋収縮力が低下していくのは当然なのですが、これに加えて腰椎が屈曲変位を引き起こしていると、さらに腱と腱の距離は短くなり収縮不全を起こします。
足が重い、力が入らない、と言った際に、筋膜・神経・関節・筋腱の距離などいろんな視点で見ることがとても重要です。
足腰の痛みでお困りの方のお力になれれば幸いです。