脇がねじれる 脇が張る 腋窩を構成する筋肉の構造

広背筋と大胸筋の螺旋構造手・腕の痺れ
広背筋と大胸筋の螺旋構造

肩の痛みや腕の張りそして痛みで来院される方の中に、「脇がねじれる」「脇が張る」「腕の内側の皮膚がつねられる感覚」など腋窩の違和感を伴っている方がいらっしゃいます。

今回は、症例をもとに、腋窩を構成する筋肉の構造と機能についてご紹介します。

また、前回のブログでは、珍しく筋膜による障害についてお話ししました。今回も筋膜が一部関連してきます。

前回のブログ「筋膜と筋間連結から見た大腿部の張り

症例

40代 女性

主訴:肩こり・肘の痛み・手のこわばり・脇がねじれて引っ張られる感覚

パソコン仕事と育児に毎日追われている方です。

肘の痛みや手の強張りについては省略し、肩こりと脇がねじれて引っ張れる感覚は関連があるため、この2点で説明していきます。

また、乳がんやリンパの異常などの内科的疾患はすでに除外されていましたので、運動器の問題に違いない状態で診察を進めていますので、検診などに行っていない方は医師の診察をお受けいただければ幸いです。

肩こりを抱える方のほとんどは、肩の可動域を測ってみると【①可動域自体に制限がある方】と【②腕は上がるが、重い方】がいらっしゃいます。

関節可動域検査には、角度を評価する定量分析と、重さや動きの滑らかさなどを評価する定性分析があります。

【①可動域自体に制限がある方】は定量分析において異常が認められた方で、【②腕は上がるが、重い方】は定性分析において異常が認められた方です。

多くの場合、ともに異常が出ている場合があります。

今回のように脇に異常を抱えている方は大胸筋や広背筋に問題が生じているケースがほとんどです。

広背筋と大胸筋の構造

広背筋と大胸筋の構造
広背筋と大胸筋の構造

広背筋と大胸筋のように【①複数の骨から起始している】ような筋肉や【②肩のように豊富な可動域を持つ部位に付着している】筋肉では、螺旋状に回転しながら停止部に向かって走行する構造をしています。

これは、どの関節可動域でも比較的一定の張力を確保するためです。

もし螺旋状の構造になっていなければ、腕をあげた筋肉を最大に伸ばした時だけ力が発揮しやすく、他の角度では筋力が低下する、みたいなことになってしまうため、首の筋肉や足の筋肉でも様々なところでこういった筋肉が存在しています。

広背筋の起始部

広背筋の起始部
広背筋の起始部

大胸筋は鎖骨と肋骨からの2種類の骨から付着していますが、広背筋はもう1つ多く3種類の骨から付着しています。

  • 椎骨(背骨)
  • 腸骨(骨盤)
  • 肋骨(一部肩甲骨も)

肋骨と背骨はご存知の通り、複数個存在していますので、それを合わせるとかなりの付着部位を要することになります。

もし、それらの付着部位が安定していなかった場合どのような変化が起こるでしょうか?

症例検討

肩の可動域・可動性検査

右肩(患側)

外転 R:95°  L:120°
(右は外転30°くらいから重くなり、95°で小指側への痺れと肩の張りが出現し止まる)

屈曲 R:110° L:160°
(右は可動域が上がるとともに背中の張りが増悪)

外転時に起こる小指側の痺れは「尺骨神経」によるもの、肩の張りは「腋窩神経」によるものです。

関与する筋肉とすれば、①広背筋②小胸筋③三頭筋 が浮かぶかと思います。

胸郭出口症候群なんかがそれに該当する疾患ですが、今回はこちらの詳細は割愛し、過去に投稿した胸郭出口症候群について下にリンクを貼っておきます。

胸鎖関節と肩鎖関節による肩の痛み

肘の痛み 多角的な視点で原因を探る

肩の痛みと腕の疲労感

腋窩神経の障害において広背筋はかなり重要です。

【四辺形間隙】として一般的に有名な神経障害がすぐに思い浮かびます。

四辺形間隙
四辺形間隙

大円筋と広背筋は同じ役割ですが、肩の外転時に上腕骨頭と広背筋の間を腋窩神経が抜けるため、そこで腋窩神経は障害を受け、肩に痛みを出すことがあります。

この広背筋の螺旋構造によって「ねじれた感覚」が引き起こされ、また「腕を上げた際の重さ」や「肩の張り」が肩こりとして現れていたようです。

問題となるなぜ広背筋が異常を起こしたかを突き止めなければなりません。

広背筋が異常を起こした原因(大臀筋)

その方は、右肘や右手のこわばり以外に昔から左足に外反母趾があるということを問診から伺うことができました。

外反母趾については、坐骨神経の問題と足のアーチの問題とを合わせて考えることが重要なため、坐骨神経の問題点を見つけるため骨盤と腰部を診ました。

すると、仙腸関節の機能制限のため大臀筋が張っています。

大臀筋は、胸腰筋膜を解して広背筋と連結しています。

広背筋の起始
広背筋の起始

白い部分が胸腰筋膜です。反対側の大臀筋と連続すると言われています。

広背筋の異常な緊張の原因の1つは大臀筋でした。

広背筋が異常を起こした原因(胸椎)

アーチの問題などとも関与しますが、身体のバランスが崩れた際に背骨はうまく緩衝材としてバランスを保つ役割を果たします。

下部胸椎が右側弯(右凸の歪み)を引き起こしていました。

広背筋の腰椎に停止する線維は、大臀筋によって引っ張られていました。

そして胸椎が右側弯になることによって、胸椎に付着する広背筋は走行する距離が短くなりたわみ緩む状態となります。

この緩む線維と引っ張られる線維という不均衡によって、「脇がねじれる感覚」を引き起こすことになるのです。

大臀筋によって引っ張られる広背筋の線維は、腕を上げていく際に抵抗を示し、腋窩神経を締め付けることになり、肩が張ることになります。

また牽引力は首肩全体に広がり、肩こりも引き起こします。

広背筋が問題であることがわかっても外反母趾からヒントを得なければ本当の原因には辿りつかないことも多いです。

初診時には、普段行っているスポーツや趣味、また過去に起こした怪我など、身体の癖を知るために色々お伺いしますが、ご協力いただければ幸いです。

タイトルとURLをコピーしました