今回の受講生から紹介された治らない腰痛の症例では、2つポイントがありました。
- ①”腹筋は腰痛を改善させる”は間違いない事実ですが、時に”腹筋が腰痛を増悪させる”こともある
- ②筋肉は、痛みを起こしている部分に付着する筋肉だけが痛みの原因となっているわけではありません。
症例
男性 趣味ゴルフとテニス
いつもゴルフやテニスの後には筋肉痛のような腰痛があり、マッサージによく通っていた。
数ヶ月前より、右ももの前に筋肉痛が強く出て、それから膝や股関節の付け根に痛みが広がっていった。
いつものマッサージで腰から足の治療をしているが、なかなか改善が見られず、当院を紹介され来院。
腰痛・股関節痛の原因とその治療
検査・触診から第2腰椎と第3腰椎で狭窄が認められました。
いわゆる「大腿神経痛」
治療としては、第2腰椎・第3腰椎の調整・仙腸関節の調整・股関節の調整で痛みも取れました。
しかし、この腰椎の治療はシンプルなパターンではありませんでした。
※治療方法としては写真のような感じで行っています。
下部腰椎の調整 仙腸関節(腸骨)の調整 回旋モビリゼーション
今回のポイント:腹斜筋と腰痛
腹斜筋は、腹筋を形成する筋肉の1つです。



黒の線で記した外腹斜筋の第7肋骨に付着する筋肉が非常に硬かったとします。
腹斜筋の一部の線維が付着する第7肋骨の関節面は第7胸椎にあり、その線維が異常を起こすと胸椎を引っ張り、可動性を制限させます。
つまり、腹斜筋が硬いなと思った場合、胸椎を治療するのが一般的ですし、今回もそのように行いました。
もちろん、その後に一時的に体の回旋などの可動域も上がり、腰痛も軽減はされました。
それについては、紹介してくださった先生もポイントとしてあげていましたが、それだけでは腰痛はすっきりしない様です。
ポイントは、
外腹斜筋の起始停止に対しての対応ではなく、大腿神経を絞扼し痛みを起こしている第2腰椎に対して、腹斜筋が及ぼす影響を立体的に掴むことです。


今回第2腰椎は屈曲と右屈するように緊張していました。通常は、伸展するように上方から下方への押圧が効果的となりますが、今回は下方から上方への方が緊張が強く、少し疑問を持つことが気づきのきっかけでした。
下方から上方へ引っ掛けた状態で、硬い方向へテンションをかけていくと、ズバリ腹斜筋にテンションがかかり、体が伸びていきました。
その後、腰痛の具合を確認するととても調子が良く、ゴルフやテニスの時も玉がよく伸びるようになったと喜んでいました。
筋肉の起始停止を対応することは重要ですが、触っている関節と遠く離れた筋肉がどのような力をかけてくるかを考えることもしなくてはなりません。
腰痛で悩む方のお力になれれば幸いです。