MRI画像を持ってこられて拝見すると、「おぉ、これはきついな・・・。」そう思わずにはいられない方々も電車を乗り継いで来ていただくことも増え、悪戦苦闘する毎日です。
中にはとても良い変化が出て一緒になって喜ぶこともあれば、もちろんそういう良い結果ばかりではなく、練習や研究を続けていかなければなりませんが、毎回難題を与えていただき感謝しております。。
都内では最近、画像診断を受けやすくなってきていることからか、当院に足を運ぶ頃には、MRI画像を準備してきていただけることも多く、私が感じとった触診が正しいのかを画像上でチェックできるという時代となりました。
【正しく触診できれば、効果は出る。効果的な治療法も正しく触診できなければ意味がない】このように勉強してきた通りであることを今でも実感しています。
徒手療法をメインにして行っている側からすると、骨を動かしていくため、ヘルニアに対してどのような力をかけると危険か、リスクマネージの点でとても重要になります。
脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、腰椎すべり症があるかないかなどを画像で確認できていると、「すべり症がある第4腰椎は前に押すのが危険だな」や「左側屈させるとヘルニアを刺激しそうだな」というのが事前にわかり触診だけよりもかなり正確性が上がります。
そしてリスクマネージだけでなく、治療においてもどのような方向へと動かせば脊柱管の狭窄部位に変化を出せるか想像することもでき大変役に立っています。
もちろん画像通りのシンプルな方ばかりではないのでそこも注意しなければなりません。
今回、画像所見が大変有用な結果を生んだ症例をご紹介します。
症例:脊柱管狭窄症 椎間板ヘルニア すべり症
50代 男性:トレーニング中に腰を痛めてから慢性腰痛で長く歩けないという症状からスタートし、ペットや子供の世話から屈むことが多く、徐々に体を起こせなくなりました。
足がつったり、お尻から足まで痺れだりと神経症状も強く、体を反らそうとすると電気が脚に走ります。
歩くのもゆっくりになり、途中休まないと数百メートルしか歩き続けません。
いわゆる坐骨神経痛と間欠性跛行があり、MRIにて脊柱管狭窄症・椎間板ヘルニアの診断を受けました。
手術も検討される状態ではあったものの、もう少し手術ではない方法で検討したいという希望から当院で治療を開始しました。




症状は主に右側でしたが、ひどい時は左足にも同様の症状がありました。
右上の画像を見る限り、L3ですべり症があり、L3/4、L4/5でヘルニアとその部分で脊柱管の狭窄がわかります。
この点で、”第3腰椎は押すのは危険”が1つリスクマネージできます。
L4/5は右下の画像で見ると左側(画像の右側)に骨棘ができています。
確かに第4腰椎は左側に傾斜しているため、L4/5の左側で圧迫がかかり、椎間板の髄核が右側へと押し出されたように思えます。
ここで1つ治療プランが出来上がります。”L4の左側屈を取る。L4/5間の右方へのヘルニアに注意”
通常左側屈を取る際には、右側の椎骨にコンタクトして左へと力をかけ左の背骨を開いていきますが、今回の場合は右にヘルニアがあるので、右の椎骨にコンタクトするのも危険があります。痺れが出ないか注意しながら行っていきます。
左上の画像(Sagittalの右の椎間孔ライン)を見るとL4/5の椎間孔をヘルニアが圧迫しているのが確認できます。
もしヘルニアを引き込むことができれば、神経痛は改善できそうです。
触診と合わせるとこの第4腰椎の棘突起、第5腰椎に対して右側へとずれていました。
確かに左側屈すると右側にずれるのですが、その場合は右の背筋が盛り上がり緊張するのが普通です。しかし、この方の場合は、第4腰椎の高さので背筋は左が盛り上がり、右側が萎縮しています。
このパターンは回線により棘突起がずれていることが多いので写真の左下であるAXIの画像でチェックしていきます。すると、椎弓板の右側が前方へと回旋し、棘突起が回旋しているのが確認できます。
なので、第4腰椎は側屈もしているけれども回旋も強いことが確認できます。
前回記載した気をつけなければならない前方回旋している椎骨で起こる神経痛のパターンであることがMRIからも予測できます。
治療に難儀する腰部の神経痛の正体(以前前方回旋時の神経痛について記載した内容)
前方回旋する理由で多いのが腸腰筋の短縮ですが、確かに腹部の圧痛もあり腸腰筋による前方かつ下方への引っ張りはありそうです。
ここで右上のCORで上部腰椎を確認するとL2~L4の間で右側屈している腰椎を確認できます。
上部腰椎の右の広げることで腸腰筋を支配する大腿神経の促通も測れそうです。
結果
上記のような予想は、何度か治療を繰り返しながら悪い変化を出したときには画像を見て、自分が錯覚している状態はどんなものなのかをフィードバックしていった結果わかってきたものではあります。
しかし、画像とも手の感触とも合っている場合、予想通りの結果がついてくるものです。
伸展時の神経痛も完全に無くなり、歩行速度も歩行距離も問題ないまで回復できました。
たまに悪化することもありますが、状態は割と変わらずなので上記の点を踏まえるとすぐに可動域も症状も改善してくれます。
昔の動画はないのですが、伸展時に体が傾いたり、立っているときに腰が横に流れたりと椎間板ヘルニア特有の疼痛性側弯(痛みによる歪み)をきたしていましたが、今は全くなく真っ直ぐ立てています。
MRIを見る限り結構大変な状態を覚悟しましたが、本当に良い結果が出て安心しています。まだまだうまくいっていない方もいるので勉強と練習を続けて技術を磨いていきたいと思います。