最近は紹介で来院される方の症状が重い方が多く、それでも良い結果が出ることもあれば、やはりとても難しく試行錯誤の繰り返しになる方もいらっしゃいます。
うまく改善した方の分析が、難しかった症状の方に活かされることが多く、良い結果に浮かれずにきちんと整理することが大切だなと感じます。
坐骨神経痛は、当院でかなり多い割合を占めます。
それは、坐骨神経痛だと診断を受けている方もいれば、太ももの肉離れとして来院されるも、実は坐骨神経の関与だったという例もあります。
『腓(こむら)返り』をよく起こす方もほとんどが坐骨神経障害です。
と言った具合に坐骨神経症候群という表現があるならば、脚の症状を抱える方の多くが当てはまるくらい坐骨神経は脚の症状のほとんどに影響を与えています。
逆に坐骨神経の関与だと思っていたらそうではなかった例をまとめていきたいと思います。
太ももの付け根・股関節周囲の吊りと張り 症例:フェンシング
フェンシングをしている学生で、かつて太ももの肉離れを経験しており、期間的には復帰しているものの、繰り返す股関節周囲の針とハムストリングスの強張りを抱えています。
ハムストリングスといえば坐骨神経の支配を受けており、肉離れの多くは背景に坐骨神経障害を抱えているため、大体は腰椎や仙骨・股関節の治療で改善します。
今回もそのように坐骨神経の促通で8割は改善するのですが、後少しがなかなか取れません。

最後の2割は陰部神経の障害と坐骨結節の歪みによるハムストリングスの緊張でした。
デスクワークをしている方の鼠蹊(そけい)部と臀部の痛みの改善から見えてきた問題点です。
フェンシングのように深く沈み込まなければならない場合に、股関節の硬さが仙腸関節へとストレスをかけ、結果神経を引っ張るような状態を作ってしまっていたようです。
坐骨結節の位置変化が陰部神経をどのようにストレスをかけていくか説明します。
Alcock管 陰部神経 機能解剖
上の図を参照してください。
座っている時、浅く座り、腰を丸めていると坐骨結節の後面が座面に当たってきます。
そこの接触している坐骨結節が痛くなる方が多くいらっしゃいますが、まれに神経痛をきたす場合があります。
その坐骨結節の状態次第で受ける神経の障害の一つは坐骨神経、もう一つは陰部神経です。(他にもありますが割愛)
陰部神経は坐骨神経と同じ仙骨の外側から体表に現れますが、仙棘靭帯と線結節靱帯と呼ばれる仙腸関節を安定させる靭帯の間である小坐骨孔と呼ばれる部位を通り抜けてきます。
その小坐骨孔を通る際に、坐骨結節の内側でAlcock管を通り抜けてきます。
この周囲の痛みは、仙結節靱帯の痛みとして現れたり、ハムストリングスに現れたりしますが、陰部神経を傷害されると鼠蹊部や会陰(お尻の穴の周囲)などにも放散してきます。
今回の症例の股関節周囲の違和感のような張りは、実は陰部神経の障害でした。
Alcock管(陰部神経)の障害とデスクワーク
デスクワークをされている方の障害は、姿勢の問題でこの坐骨結節の内側がちょうど座面になるような座り方をしていたことが原因で、姿勢の指導と坐骨の調整ですぐに改善しました。

このように坐骨が外方に回旋する、我々の用語で言うEX腸骨の変位を仙腸関節障害によって起こしており、それと猫背のデスクワーク姿勢から陰部神経を傷害されていました。
肉離れとの関連(ゴルフ)
陰部神経が股関節周囲の問題を引き起こしていたことは分かりましたが、ハムストリングスの肉離れは当初の坐骨神経の問題だけかというと、これも坐骨の変位が問題でした。

坐骨結節が内側や外側へと位置が移動すると、筋肉の長さが変化するため、そこに停止するハムストリングスの張力が変わります。
今回はゴルフの捻転動作が、仙腸関節に回旋ストレスを与え、その結果ハムストリングスが緊張するという状態でした。
膝が深く曲げられない人にもこの問題が隠れているケースが非常に多いので、膝が痛い人にも仙腸関節の機能検査が必要となるケースがほとんどです。