治療に難儀する腰部の神経痛の正体

脊髄神経後内側枝大腿外側皮神経
脊髄神経後内側枝

いつの間にか開業12年目を迎え、学生時代から合わせると業界20年になっていました。

大学の3年生の時から始めた今の技術も18年勉強を続けていることになり、続けてきたからこそ見えてきた世界があるなというのを実感しています。

これまでの2倍の時間がまだ残されていると考えれば、今よりはもう少し難しい症状でも対応できるようになるのではと期待をしつつ、、身体を理解するということが、10年前感じていたよりも途方もない道のりであることを実感して多少疲弊しています。

そんな疲弊が夏バテであったと信じ、自分の中で苦手意識のある、腰椎の前方変位側の神経症状について少し考察をしてみたいと思います。

参考論文:Analysis of the Posterior Ramus of the Lumbar Spinal Nerve: The Structure of the Posterior Ramus of the Spinal Nerve

腰椎の前方変位とは

腰椎滑り症や分離症のように脊椎が前方へと滑ることによって腰痛や神経痛を起こすことは一般的にも知られています。

下の椎骨に対して、上の椎骨が前方に滑れば、神経の通り道である「椎間孔」が狭くなるからというのと、前方へと椎骨が滑れば、腰椎は基本前弯(前方にカーブ)しているため、いわゆる腰である後面は狭くなり椎間板にも負担がかかるからである。

腰椎の前方滑りが起こす位置的変化

前方へと変位を起こすのは、これだけではなく、回旋によっても椎骨は前方へと移動を起こす。

ただしこの場合の前方変位は片側だけ。

つまり前方変位と回旋が組み合わさると、片側は大きく前方へと移動し、もう片側は前方への移動は滑った部分から回旋した分を引いた距離だけ前方へと移動したことになります。

これが滑り症であっても腰痛や神経痛の出現に左右差が生じる理由です。

椎骨の回旋変位モデル

脊髄神経 後内側枝

前方変位は、私がおこなっている徒手療法含め、指で触る、つまり押すことでは改善できないため、腹部から押し出す、または反対に回旋させることでしか治療できないため、局所というよりは遠隔的な調整となる。

前方変位を起こしている場合に起こり得る神経障害について脊髄神経の後内側枝というのがあります。

脊髄神経後内側枝(紫色)

この神経は椎間孔を出てすぐに分岐し、後方に位置する椎間関節の感覚を支配しています。

さまざまな治療テクニックでこの脊髄神経の後内側枝を介して反射テクニックが存在しており、背骨際を治療されたことのある方はたくさんいらっしゃるかと思います。

難しいのは、この神経がどのように椎骨の傾いているか、やどこの筋肉の緊張によって刺激をされているかをきちんと触診してみつけていくことです。

幸い、この神経はすぐ真横の関節を支配しているので想像がしやすくなります。

腰椎の突起の位置関係

腰椎にある乳頭突起と上関節突起は前方変位している側において、先ほどの脊髄神経後内側枝を引っ掛けるように牽引してしまうため、前方変異による神経障害ではその突起を手前に引き出してあげなければなりません。

上関節突起・乳頭突起の外側を走行する後内側枝

これがなかなか難しい神経痛の1つだと感じています。

上殿皮神経

上殿皮神経というのも同じような走行をしており、こちらの難しいのは下の方にかなり伸びてくるため障害位置を特定しづらいことではないでしょうか

上殿皮神経

こちらは肋骨突起の後を通るので前方変位側というよりは後方変位側で牽引されやすいという印象です。

臀部のピリピリする神経痛などで腰部の治療で改善する場合があるのは、この神経の走行が所以です。

ただし、腸骨の上に差し掛かる部位で圧迫を受ける場合が多いので、その場合は仙腸関節の調整が必要になります。

この神経の走行の腹側部を走行するのが膝を支配する大腿神経・鼠蹊部を支配する腸骨下腹神経などです。

こちらの神経の方が腰椎の前方変異によって直接刺激されやすい部位かと思います。

肋骨突起の前方を走る大腿神経

治療が難しい神経障害

このように椎骨の突起の前方と後方を神経は走行するため、椎骨の前方への滑りや回旋が起こっている場合は、遠隔的に後方に引き出すことが必要になります。

物理法則から引き出すことが無理なため、力学的な力をうまく応用して行い神経の刺激を落ち着かせる必要があります。

今でも難儀する神経痛の多くは、この前方変位があるパターンだと自覚はするものの今でも研究している症状です。

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