最近はレントゲン画像やMRI画像をお手元にお持ちの方が多く、来院時に拝見できるためとても助かっています。
「アメリカではレントゲン画像を横に置きながら触診をするから骨格の触診の上達が早い」というのをよく耳にしていました。
確かに画像で目星をつけておけば、状態把握は容易な気がします。
しかし画像に引っ張られすぎて、なぜそのような結果になるのかを想像する行為を疎かにしてしまうかもしれません。
そんなことを実感させられる今回の症例は、「肩の運動制限と痛み」です。
症例:50代 女性
首の斜位のレントゲン画像ではC5/6の椎間孔が狭窄しているのが確認でき、MRIでは第五頚椎が変性し、軽いヘルニアを確認することができます。


一年近く整形外科に通うが改善しないため紹介にて来院されました。
症状は、右肩を挙げると痛み、横から腕を上げると70度くらいで痛みが起こり、前方から挙げると120度くらいまで上げることができます。
レントゲン画像を細かく読み取ると下記の動画のような状態であることが予想できました。
第5頚椎が後方に変位し、右回旋しています。
そのため第6頚椎との間から出てくる肩の神経が障害され、症状を来たしているようでした。
治療計画:
ここで1つポイントになるのが、第5頚椎自体が問題なのか、第5頚椎をこうほうかつ回旋させている要因が他にあるのかです。
つまり第5頚椎の後方・回旋変位を治しさえすれば良いのか、その他にも治療が必要になるのかです。
腰痛などの症状もあるため、腰の治療も行いましたが、決め手は「右回旋時に右肩が動きやすい」でした。
頚椎を回旋・側屈をしながら肩の動きをチェックすると、左回旋時に肩の可動域低下、右回旋時に肩の可動域改善、左側屈時に肩の可動域改善、右側屈時に肩の可動域低下でした。
つまり右回旋左側屈で改善するということは、右回旋時は第5頚椎はその方向に動きやすいため、これだけではない、ということがわかります。
細かく関節の動きを触診していくと
位置的には問題ないが、第6頚椎が、第5頚椎に対して前に行こうとする緊張がありました。
第5頚椎の後方変位を改善しても第6頚椎の右回旋を作ってあげなければ、すぐ戻ってしまうようです。
ここがレントゲンでよく見えているものと、実際に体の中にある緊張は異なる可能性があるということです。
治療:
第5頚椎後方変位・右回旋変位は右回旋に可動性が亢進。
位置的にはそんなに悪くは見えないが、第6頚椎右回旋制限。
治療は第6頚椎ということになります。