二つの症状が関連していることはよくある話でそんなに難しいことはない。
例えば、右股関節の症状を改善することで左肩の痛みが取れる、なんてことはそんなに珍しいことではない。
二つの事象を結びつけて治療を組み立てるなんてことは日常的に行っているので難しいことではないが、その二つの事象が隣り合っていると治療はとても難しくなる。
今回は頚椎症の神経根症の直上に脊髄症があり、かなり読み解くのに難しかった症例を自戒を込めてまとめていきたいと思います。
症例:左手の痺れ 上を向くと痺れる 右肩の可動域制限
60代 女性
首を動かすと左側の肩から手まで痺れがあり、特に上を向く、左に振り向くとビリビリと痛みに近い痺れが出現して数分持続する。
上を向くというよりは、正面を向くくらいでも痺れが出るため、やや下を見るような姿勢でいないとならないため、少しうつむいているくらいである。
首の動作による痺れのため、頚椎症あることはすぐに予想がつき、手の痺れから下部頚椎によるものだと予測がつきます。
そして反対側の右側の肩の運動障害があります。このように左右の症状を同時に抱えている場合、それが神経支配的に隣接している場合は、難解となりやすいので、治療前から覚悟した症例です。
MRI画像の左の断面を見ると、C6/7で椎間板ヘルニアが存在しているのが確認できる。

おそらく手の神経支配はC6,7,Th1なのでここが原因かと予測できます。
上を向いた時、そして左に向いた時にさらに神経の圧迫が起こる異常な椎骨の動きが考えられます。
肩の運動障害のある右側の断面と比べてみると、確かにC6/7の椎間板ヘルニアは左側よりも小さいが、C5/6がかなり変性が進んでいて椎間高が小さくなっている。
肩の神経支配はC5,6なので画像所見と症状が一致しています。ですのでこの画像所見と触診から神経の圧迫を取るための椎骨の異常な動きを改善させることで症状もとれる事が期待できます。

二つの矢状面を並べるとよくわかるかと思います。

治療ポイント①
主症状は、首の動作時の左手の痺れ、であるために画像所見とも一致している、C6/7の左側を伸ばして広げてあげれば良い事がわかります。
症状の強さは左手の痺れが1、ついで右肩なので左手の症状を最優先しましたが、ここで選択を誤りました。
C7に対してC6の左側を広げるということは、右側に伸ばす、つまり右屈していかなければならない。
左側の頚椎に対してアプローチするため、直接C6にコンタクトして、右屈したのですが、C5に対しても右屈する力が働いてしまい、その後右肩が一時的に上がりづらくなってしまいました。
まず、ポイント一点目は、第5頚椎に対して右屈しないように上手く固定をかけながら、第6頚椎にだけ右屈をかけていくことが難しい点でした。
もしくは先に右肩に対しての第5頚椎を十分離解させて隙間を確保してから手の痺れの治療に移る方が良かったのかもしれません。
治療ポイント②
右肩が上がりづらくなる、ということは右側の頚椎にも問題がそれなりに大きく潜んでいたことが予想できます。
再度右側の所見を捉えていこうと画像を見返すと、もう一つのポイントが見えてきます。
C5はC6に対して後方滑りかつ伸展しているため、伸展時に脊柱管を狭窄してしまう、頚椎症性脊髄症の症状がある事がわかります。

頚椎の神経根は脊髄に対して一つ上位の位置にあると言われているため、もしかするとこの第5頚椎レベルの脊髄神経が第6頚椎神経を障害させ左手の痺れとも関連していたかもしれません。
ここがもう一つの選択の誤りでした。
C6/7の椎間板ヘルニアによる神経根障害による左手の痺れ以外にも手の痺れを起こす可能性がある頚椎症性脊髄症が第5頚椎に存在していて、それが第6頚椎よりも第5頚椎が後方に位置しているというのはとても重要なポイントでした。
様々な頚椎のテクニックがいろんな流派や、いろんな団体が盛んに取り組んでいますが、基本、頚椎の後方からコンタクトして治療することが一般的です。
第6頚椎は第5頚椎に対しては前方に位置していることが第6頚椎に対して後方から前方にコンタクトすると、第5頚椎がより後方に滑る危険性があります。
第1のポイントの最後にあったように第5頚椎の治療を先に行わなければ行けなかったのです。
もしくは第6頚椎は前方からのコンタクトで治療することも一つの方法だったかもしれません。

結局のところ第5頚椎の治療がある程度進んでから次第に左手の痺れ、そして右肩の可動域が改善しました。
ただやっぱり左手の痺れは第5頚椎だけでなく第6頚椎も行うことで完全に取れたのでどちらも影響していたようです。
このようにはっきりと神経障害のポイントが把握できても治療の順序によって効果もかなり変化が出ます。
最初一ヶ月は試行錯誤でしたが、傾向が見えてからは一ヶ月でほぼ症状が取れました。
最初思うような結果が出なかった際にも辛抱強く通っていただいたおかげで、改善に結びつきました。
いつも健康に対する道なきみちを歩ませていただきありがとうございます。
最後に最近まとめた症例を動画で説明したものをご紹介します

