視覚の神経学を勉強していたため、めまいは昔から得意な症状の1つでしたが、耳鳴りや頭痛・顎関節の治療などを通じて、ここ数年頭頸部の機能解剖についての触診がしっかりできるようになって来たことも重なりだいぶ成功する確率が上がってきました。
うまく見切れると、こうも良くなるのかと自信をつけさせてくれる方々に感謝すると共に、さらにうまくなるべく練習と勉強を続けたいと思います。
下記の動画は今回の症例の状態を3Dモデリングしたものです。
症例:20代 女性
一ヶ月ほど眩暈に苦しんでおり、かつて足腰の治療で通っていたこともあり、めまいの治療もできるか問い合わせがあり、確証はないためとりあえず数回治療をしてみて、その後も続けるか判断するという流れで治療を開始しました。
病院での検査は一通りしており、何か特別な大きな病名がつくことはありませんでした。
ただし、この少し前から肺炎を患っております。(実はここもポイントでした)
症状は、寝起きや動くとめまいが起こり、一時期は回るめまいだったが、ここ数日はふわふわするめまいになっていたそうです。
めまいの治療において、めまい感の方向がポイントになるのですが、記憶を遡ると、回転性のめまいがあった時には、「時計回りの回転かな」という曖昧な記憶でした。なので回転方向は保留にしております。
そのほかにまぶたが重く、特に右まぶたが持ち上がらないという症状もあります。
ベッドサイドで眼球をチェックすると右側に動かすとめまいと眼振が現れ、注視しながらの左回旋(眼球は右に動く)もめまいが出現。
注視せずに首を動かすのでは右に向く方がめまいが強くなります。

まとめると
右への滑動性眼球運動の障害と、前庭動眼反射は首の左回旋時の右眼球運動の低下、頚椎の右回旋時の前庭機能障害が予測できます。
頭も若干右に傾いているため、外眼筋の水平運動に対してやや上転や下転の動きが混ざる必要があり、正常な外眼筋の運動が行いづらいのも想像できます。
触診:
頚椎は左凸側弯、胸椎も左凸側弯が強く、やや頭は右に傾いています。
胸椎の左凸側弯は、中部胸椎で強く、肺炎が右の下葉にあったことから、下葉付近の胸郭が広がらなかったために起こった側弯であることが想像できます。
Th6左後方上方偏位で、右胸郭の拡張制限
頚椎は第2、第3頚椎の右回旋右屈偏位で左回旋左側屈制限
後頭骨は左回旋偏位で右回旋制限
第1頚椎(環椎)は左方偏位で左屈制限

考察と治療計画
頭を右に傾く際の眼球の反射活動は、右の目で言えば右の上斜筋の活動による内方回旋を行い眼球を水平に保ちます。この際に右側では上斜筋を利用します。

常に身体が頭位を右屈で維持すると上斜筋は持続的に収縮することで視覚を安定させます。

眼球運動の外転は通常、外側直筋が担いますが、頭を右に傾けていると右を水平に動かすには、やや上転させる必要があるため上直筋を少し利用しなければなりませんが、この上直筋と頭を傾けている際の内方回旋に利用している上斜筋は反対の方向の作用となるため、これが反対の作用をする筋肉を同時にコントロールしなければならず、神経系の混線した理由だと考えました。
触診結果と症状の出方から立てたプランは、
①頭位の回復:右屈位で頭位を作っているために起こる上斜筋の持続緊張を緩和させる。
主に右屈しているのは、頭蓋(環椎後頭関節)、第2頚椎、第6胸椎
②回旋の協調運動を調整:頚椎は右回旋、頭蓋は左回旋しているので回旋運動の正常化を図る
右回旋時に頭位を保持したまま第2、第3頚椎が右回旋し始めています。つまり、頚椎の回旋を干渉させるように頭蓋が逆に回旋し始めているのです。
おそらくこれは、眼球運動の補正を頭蓋でおこなったのではないかと推測しています。
左回旋は、全体の回旋の40%を1つの関節で占める環軸関節が機能してくれていたため、比較的めまいが起きていなかったのでしょう。
この2つをメインに調整を行うと、まさかの翌日からめまいが消失。1週間くらいは変動があったものの、今はめまいなく過ごすことができているそうです。
めまいも腰痛や痺れとかと同様、正しく読み取れればちゃんと効果が出ます。
久しぶりに視覚の神経学をフル回転で使いましたが、あまり使用頻度が高くないのでかなりうる覚えとなっていました。まとめながら復習して頭に焼き付けておきたいと思います。