最近は、母指のCM関節症や、へバーデン結節・ばね指などの腱鞘炎の症状の紹介が多かったり、楽器演奏者の治療もあったため、手の細かい機能解剖を復習しながら施術に当たっていた甲斐もあってか、手首の捻挫を機に発生した母指の運動障害が即効したのでこの機会にまとめていきたいと思います。
最近使っている3Dモデリングを利用して機能解剖を説明していきたいところですが、今回は外傷ということもあり、一般的な力の伝達ではないイレギュラーなため基本解剖についてはまた後日に作成していきます。
下記の動画は、先日にちょうど作っていた手首の背屈掌屈の3D運動学です。
症例:自転車を支えたことによる手首の捻挫
自転車を押して歩いているときに、左側に倒れそうになり左手で支えている側の手首を負傷しました。
ハンドルを握っているため、親指はハンドルの下に回っています。
自転車の重みを親指は受け、外転方向に力を受けます。
倒れないように逆らうため、母指・手首や肘で反力を加えていきます。
受傷後、手首の底背屈すら痛かったが、次第に改善し、最後に背屈動作での手首の引っ掛かりと母指を爪の方向へと伸展させる際の痛みが残り治療にあたることになりました。
触診:
触診の結果を3Dモデリングしました。
まずは動画後半にある母指の状態は、自転車の外力に負けて、屈曲・外転変位しています。
中手骨と大菱形骨ともにその方向へと力を受けているようです。
動画前半にある近位手根骨の外旋は、倒れた自転車を起こすように回外方向へと力を入れた結果かと思います。
舟状骨の背屈転位も回外と背屈に力を入れたことにより、三角骨側よりも舟状骨の背屈が強く行われたのかと思います。
まず最初に見てすぐにわかったのは、この舟状骨の先端が浮いていることでした。
動きも掌屈の動作に制限があります。
母指の背屈の際に大菱形骨が舟状骨に対して伸展していなければならないのに、大菱形骨は屈曲し、舟状骨は背屈している不自然さがあります。
治療
触診結果の動画と正反対の力をかけていけば治療になります。
舟状骨を右手で、大菱形骨を左手でコンタクト。
まずは舟状骨の内旋と掌屈方向、つまり手の平を下に向けている状態では、下の方向へと押圧を加えます。
そして大菱形骨並びに母指の中手骨を背屈方向(上に向かって)に押圧を加えます。
3秒くらいでしょうか、「コクンっ」と音が鳴り、手根骨がはまったように舟状骨の背側転位が改善し、母指も手首の動きも問題なく可動しました。
読み取りがうまくいけば、効果は必ず出る。正確な読み取りをこれからも日々鍛錬していきます。
昔に上げた手首の治療などの動画を最後に添付しておきます。