仙骨の変位 多方向の動きの制限

仙骨の変位と可動性腰・股関節の障害
仙骨の変位と可動性

開業して12年目、コロナ禍にもかかわらず昨年は紹介していただく機会がかなり多く、たくさんの新規の方に来ていただけ、臨床経験を通して学び深い一年でした。今年に入ってやっと時間ができてきて、その気づきから書物をたくさん読み、復習を重ね、やっとここのところ施術にまで昇華できたと感じられるようになってきました。

今回と関連のある参考図書:

そして昨年からセミナー活動も再開し、また同じ触診を1から学びなおしていると、もう20年にもなるのにまだまだ気づきがあります。

しかし、セミナーを再開してレベルアップは確かにできていきますが、昨年末のように予約が120%にまで詰まっていると、予習・復習・練習が疎かになり、余裕があった予約状況と比べると、治療技術の精度は少々雑な部分を感じてしまいます。

毎月のセミナーで復習するだけでは足りず、前回うまくいかなかった部分や苦手な部分を毎日練習して次回の施術を迎えたり、書物をたくさん読みまだ見ぬ症例に対して知識をつけておくことが、実際にはとても良いパフォーマンスだったことがわかりました。

今回は、その1つを文章にまとめながら復習していきます。

仙骨の一般的な変位

この数ヶ月での気づきは、ごく当たり前なことでもありますが、手の感触で理解したのは大きな変化だと思います。

昨年末から通い続けてきたけれども効果が現れなかった方には大変申し訳ありませんが、ようやくその方々にも変化を出せるようになってきました。

その変化を出せるようになってきた要因の1つが今回説明する「仙骨の機能制限」の理解です。

仙骨の変位

仙骨は脊柱との連結である「腰仙関節」と骨盤を構成するための寛骨(腸骨)との関節「仙腸関節」とがあり、どちらも腰痛治療や全体のバランスの調整としてとても重要な部位となっています。

図のように、仙骨の状態をチェックするポイントとしては「うなづき運動」の触診です。

仙骨は前傾すれば、仙骨の上端で前方への可動性が増加し、下端で前方への可動性が減少します。

また後傾すれば、仙骨の上端での前方への可動性が減少し、下端での前方への可動性が増加します。

カイロプラクティックでは、この後傾をしている仙骨を「ベースポステリア」と表現し、1つの問題として取り上げています。

仙骨の前後傾と側屈の触診

そのほかに回旋と側屈があり、回旋の検査は前方への可動性を左右で見比べる簡単なものになり、

側屈であれば、仙骨の左右を「上方から下方」、「下方から上方」へと押圧して左右の動きを確認し、左屈・右屈を触診していきます。

仙骨は

  • 仙骨外側縁から坐骨神経が体表へと出てくる
  • 仙骨底の前面をL5・S1の神経が通る

こういった特徴から仙骨の変位(回旋・側屈・うなづき)を読み取ることで足の障害にも効果が出ます。

脊柱の土台でもあるので首肩の症状にも効果があり、仙骨の触診の理解はとても大切です。

仙骨の触診の気づき

仙骨の変位(回旋・側屈・うなづき)を正確に触診するための、【仙骨を動かす方向を正確に操作する】ことがいかに難しく、そしてそれが大切なのかを頭と手で理解することができました。

例えば、

仙骨は後傾すると、上記のように仙骨底(仙骨の上端)が後方に変位するため、第一仙骨、第二仙骨レベルで後方に触診できます。

そしてこれは、仙骨下端において上方への押圧が硬さを出してきます。

それは【上方への押圧】が【うなづき運動】へと転換されるからです。
下記の図の右下が後傾時の触診で得られる感覚です。

仙骨の後傾に対する触診

では、左屈した仙骨に後傾する力が加わると、後傾した仙骨に左屈するのとは異なり、右仙骨底(右仙骨上端部)が最も後ろに起き上がってくるため、下記の右下の図のように左仙骨尖(下端)が前方に右仙骨底(上端)が後方に変位していきます。

仙骨の変位 左屈と後傾
仙骨の変位 左屈と後傾

ここで先程の変位と押圧の硬さの表を見てみます。

下記の表(右上)のように、【後傾した場合の仙骨尖(下端)は上方への押圧は可動性が制限】されます。これは仙骨が前傾するための前方回転が硬くなるために仙骨の下端を上方への押圧が前方回転しないように制限がかかるためです。

左傾では表(右下)で【右側の仙骨尖では上方への可動性が柔らかく触知】できます。これは、左に傾いている仙骨の下端を上に押すと、右側では左に傾くことで動き、左側は右に傾けないために硬く触知されるためです。

左屈と後傾時の動きの制限

つまり、左傾+後傾した右仙骨下端では、上方への押圧が柔らかくも・硬くも触れるということです。

これを今までは数学のベクトルのように相殺されると考えていたのですが、【身体の中では力は内在して留まる】ために相殺されません

位置の変化は力によって相殺されうるのですが、機能制限はポジション関係なく、力のベクトルは残り続けるため、例え上方に変位していようとも上方への動きの制限がなくなるわけではないのです。

ここがとても重要な気づきでした。

正しく触れれば、左側屈している仙骨が分かれば右が上方へ傾く動きは柔らかくなりますが、後傾がそこに加わっていると、前傾する力となる上方への押圧には抵抗を示す。

当たり前ではあるのですが、位置的な変化からおよその問題を予測しているため、こういった細かい緊張を見逃してしまっていたのです。

ベクトルで考えても、仙骨のうなづくための力と左屈する力のベクトルは、一言で「上」と表現しても実際には異なる方向であることは、冷静に考えれば想像できます。

今回このような問題を気づかせてくれたのは、いつもきてくださる方だったのですが、左側屈の緊張(左の上方可動性)は改善した後に、右の上方可動性制限が現れてきて、先ほどやった治療が間違えたのか、それとも見えていなかった緊張が現れたのかと考察した中での発見でした。

確かに次に来られた時も傾かせるように上方への押圧、前傾させるように上方への押圧と正確に触り分けてみると、ちゃんと異なった反応を示すのが見えるようになりました。

この気づきはとても当たり前なのですが、それを理解したこの1ヶ月は腰や足の障害に対してとても良いパフォーマンスを出しています。

仙骨の変位と可動性

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