ゴルフ 運動解析の研究論文を読んでパフォーマンスを考察

不定愁訴

プロゴルファーの方をご紹介いただくようになってこの一年だいぶ勉強させてもらいました。

痛みの治療は昔もありましたが、試合で勝てるようにコンスタントに治療を続けたのは今回が初めてで、関節の動きを調整したり、神経の促通を図ることが、どれくらい試合の成績に関わるのか不安でしたが、3戦中2試合で入賞、この度の試合では3位と好成績を残してくださりました。

これまでにも試合直前にケアに携わった選手が好成績となったことは、多く経験してきましたが、この繊細な競技においても良い結果を残してくれたことは私自身にも自信となりました。いつもありがとうございます。

痛みの治療と、その先にあるパフォーマンス向上とは、別問題ではなく、繋がりがあるものであると実感していましたので、今回はそのつながりについて研究論文などを交えながら考察していきたいと思います。

股関節と腰椎の回旋リズムについて

少々古く、2020年の5月号となりますが、災害整形外科の月刊誌が「人工関節後のスポーツ」という題で股関節と膝関節の人工関節後の運動解析の詳細を投稿している論文がありました。
※金原出版 整形・災害外科2020年5月「人工関節後のスポーツ」バックナンバーのリンクはこちら

そちらの参考文献をもとに色々論文を読み漁ったので、参考にしながら最近の臨床とを照らし合わせていきたいと思います。

「THA後のスポーツ動作解析」の中に「THA後のゴルフスイング動態」について書かれています。
※THA:Total Hip Arthroplasty 人工股関節置換術

そこでは、ゴルフのLeading Hip(左股関節)の最大外旋位で形成したネック部分と寛骨臼でのインピンジメントのリスクについて書かれていました。

そこで、股関節の回旋についてゴルフの運動解析を行った論文を調べてみました。

“Kinematic relationship between rotation of lumbar spine and hip joints during golf swing in professional golfers”
リンクはこちら

無料でダウンロードできる論文だったので写真を一枚引用致しますと

Ensemble angle of leading and trailing hip, and lumbar spine during the golf swing of a representative professional golfer. Red points represent the peak values of each joint angle. Positive degrees in the lumbar spine, leading hip, and trailing hip joints represent right axial rotation, external rotation, and internal rotation, respectively.

股関節と腰椎の回旋角度のスイングフレーズでの違いについてプロのスイングを元に解析されていました。

画像を見ての通り、Leading Hip(左股関節)とTrailing Hip(右股関節)の回旋角度のピークの違いがわかります。

股関節の回旋とスイングフレーズを3Dモデリングしてみました。

ゴルフスイング トップ
トップの位置での股関節の回旋の違い

アドレス時からスイング開始とともに回旋が徐々に増していきます。
(膝関節の回旋などの代償もあり初動で減少する部分もあるようです。

そしてLeading Hip(左股関節)はトップの手前で外旋のピークを迎え、その後はTrailing Hip(右股関節)の内旋によって腰椎の回旋が増加します。

トップの位置を過ぎた後に、Leading Hipが外旋し始めますが、一度Trailing Hipがさらに内旋していくのは、膝の外反と脛骨の外旋によってさらに右の股関節の内旋が行われるためだと思います。

実際に臨床でも、トップの位置で右股関節がロックするくらいに目一杯回旋してしまうと、スイングでもしっくりこないようで、トップの位置での股関節の遊びを作ってあげることはとても喜ばれるのは、この研究論文の結果からも納得できます。

ゴルフ ダウンスイング初期
ゴルフ ダウンスイング初期の股関節の回旋

膝関節の回旋については、整形・災害外科の「スポーツ活動に伴ってTKAに加わる負荷と摩耗 ➖ゴルフのスウィング動作解析より➖」のなかで、ゴルフスウィング動作中の膝関節動態に関する論文が引用されていましたので、それを参照しました。

“Trail Kneeはテークバックのトップにかけて膝関節伸展・脛骨内旋位となり、その後、インパクトに向け屈曲・脛骨外旋し、フォローに向けて伸展するが、脛骨回旋運動は少ない。Leading Kneeはテークバックトップの位置で、膝関節屈曲・脛骨外旋位隣、インパクトに向け膝伸展・脛骨内旋運動が生じている。”

新庄琢磨ほか:人工膝関節全置換術後患者と健常者のゴルフスウィング時の膝動態解析。臨スポ医学33:70−74,2016

この論文の中に含まれる時間軸に対する脛骨の回旋を見ると、trailing Kneeは、トップからダウンスイング初期から始まって、すぐに回旋をとめてインパクトを迎える点から見ても股関節の外旋に移行するタイミングと類似します。

膝を痛めている方に対しても、股関節の回旋可動性がいかに重要かもここで論文との一致した見解を改めて持つことができました。

以前、トップの位置での右股関節のインピンジメント(衝突)現象について動画を作ったのを最後に載せておきます。

最後に

今回、プロ選手に対してのコンディショニングがこれまで見てきたゴルフをする方に対する治療の延長だったことは、人工関節後のスポーツの論文を読んで見ても、私の今までの経験的にも間違いないようです。

つまりは、ゴルフを趣味で行っている方々の身体的不調を今まで見させてもらってきたからこそ、細かい調整ができてきたのだと思います。

その中には、もちろんうまく治せなかった方もいて、今でも「あーすれば・・・」「こーすれば・・・」と毎日のように頭の中や日々の練習の中で検討を続けています。

今回のようにスポーツ選手も一般の方も満足いく結果を提供できるように勉強を続けていきたいと思います。

整形・災害外科の2023年7月号が「腰痛診療の深化➖”標準“と“こだわり“を知り診療に生かす“」とかなり良いテーマで書かれている本でしたので次回は、腰痛について再度復習と掘り下げを行いたいと思います。

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