脳神経機能から見て視覚には2つのシステムがあります。
そのシステムの違いは、脳の神経伝達の2つの経路の違いとしても知られています。
1つは背側経路で、【行為の視覚システム】です。
もう1つは腹側経路で、【知覚の視覚システム】と呼ばれています。
行為の視覚システムとは、物体に手を差し伸ばしたり、目を向けたり、物体に対する自己を中心とした行為・行動のシステムとして利用され、脳の頭頂付近に分布しています。
リアルタイムに変動する自己と物体の距離などに対応するためにこちらは遅延作業には向いていないとされています。

知覚の視覚システムは、物体同士の相対的な比較をする際などに働くシステムで、テレビや携帯で動物や物・人を見ていてもそれが人である、犬である、または大きい小さいという比較ができるのも、知識として蓄えられた視覚システムが使われています。
脳の底面である腹側に支配領域があるため腹側経路と呼ばれていますが、記憶システムが近くに分布しているのも関係がありそうです。
そのシステムとスポーツとして関連が高いのがイップスと呼ばれる不調です。
そのほかにも、めまいやふらつきなども関連が高いテーマですが、今回はスポーツコンディショニングと視覚機能について症例とともに紹介します。
症例:
10代 男子 サッカー(Jユース所属)
左サイドバック
スポーツコンディショニングという立場で、パフォーマンスを上げたい場合、まず基本の動きについて聴取します。
どう言った動きが苦手か、どう言った動きは得意か
①左利き足で、ロングボールが蹴れない
②足がよくつる
③右サイド(ディフェンス時の中央)への切り返しで遅れる
④左足で時計回りでのターンで左足の戻りが遅れる
こういったパフォーマンスの気になる点がありました。
動きでの共通点を分析すると右回旋での反応の遅れが予想できます。
①左足にとっての蹴る動きはデカルト座標軸でいう左足を前方に移動させる右回旋の方向への力が必要
③右サイドへの反転して走る動きも最初に右回旋が必要になります(この場合は右を後方移動が強く必要)
④左足での時計回りは右回旋(右を後ろに左を前に)左足が遅れるとあるので左側の前方への制限が予想できます。
そもそも左足のGroin Painで来院されていたので左股関節の主訴と合わせて考えると、骨盤が左回旋していたので左股関節の寛骨臼の被さりによるインピンジメントのようでした。
インピンジメントやグローインペインの治療は簡単なのですぐ良くできますが、パフォーマンスをもっと良くしたい、という点については別の視点も加えて検討する必要があります。
さて、ここから反応の速さを増したいという希望に対して手足の速さだけでなく、【反応時間の短縮】がポイントになってきます。
ここで注目するのが、行為に対する視覚システムです。
体を動くボールに移動させる行為や、動く相手に身を寄せていく行為には、この背側経路である行為の視覚システムを使います。
そして重要なのが、サッケードと呼ばれる高速眼球運動がこの反応速度と密接であり、脳の外側頭頂間溝領域の活性化により機能します。
またその周辺領域を含めた前部頭頂間溝領域が背側経路の中継点となっています。
反応時間を早くしたいためにサッケードを検査してみると
右へのサッケードで反応が遅れます。
右へのサッケードが遅れれば、そもそもの反応自体が遅れ、どれだけ足が早かろうとも追いつくことは難しくなります。
さてこのサッケードはどういったことで遅れるのでしょうか・・・。
ここについてはまたさらに深い考察が必要になり説明がかなり難しくなるので今回は割愛します。
スポーツコンディショニングにおいて痛みを取り除くことは、その先にあるパフォーマンス向上を容易にさせます。
今回は股関節の問題を機に、その子のパフォーマンスを上げるために行為の視覚システムを用いた検査と治療を行いました。
コロナ禍でも研鑽を続ける選手の力になれれば幸いです。
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