声の高さ 痙攣性発声障害

声帯の機能解剖不定愁訴
声帯の機能解剖

ジストニアの1つとして紹介される「痙攣性発声障害」は、歌手に多く、歌うことを諦める必要があるため、とても深刻な症状です。

一般的な症状として、声帯の張力が保てずに声帯の異常な震えが起こり、発する声も震え「かすれる」「声が震える」などと訴える方が多いです。

初期症状として「音程が上手く取れなくなった」という症状から始まる方が多いことや、「ある音域においてだけ声が震える」と言った一般的な症状から察するに、【声の高さ調整】は1つのキーワードになると考えています。

今回は、声の高さの機能解剖を1つ紹介するとともに、症例検討を紹介します。

声の高さ調整

声の高さは、主に「声帯の長さ」と「張力」とを反映し「呼気圧」によってもある程度の影響を受けるとされています。

声帯の長さは個人によってほぼ決まるので、調節が可能な要素としては、声帯の張力と呼気圧と考えられます。

発声に関わる機能解剖
発声に関わる機能解剖

この声帯の張力の調整に関わっている関節が、輪状甲状関節で上の図の甲状軟骨と輪状軟骨によって構成されています。

2つの軟骨の間には輪状甲状筋が存在しており、その筋肉の収縮によって声帯の長さが変わり張力を調整しています。

声帯の機能解剖
声帯の機能解剖

実際の声帯は、輪状軟骨ではなく、輪状軟骨のすぐ上に付着している被裂軟骨に着いており、被裂軟骨に付着する筋肉によって張力意外に、左右に分かれる声帯の開閉運動をになっています。

以前にも発声のセルフケアとして輪状軟骨の調整についてお話ししました。

声帯の治療 輪状軟骨
声帯の治療 輪状軟骨

これは声の高さ調整にも影響しています。

今回は、さらにもう2点ポイントをお話ししたいと思います。

舌骨の引き出しと声の高さ調節

舌骨筋による舌骨の引き出しと甲状軟骨の屈曲

舌骨筋によっても甲状軟骨の屈曲は起こるため、顎関節や舌の動きに異常がある場合、声の高さ調節も難しくなってしまいます。

当院では、このことも踏まえ、顎関節の機能や舌の筋力検査も利用しながら発声の機能改善を図ります。

頸椎の前弯と声の高さ調節

輪状軟骨に話は戻りますが、輪状軟骨は頸椎の前弯に合わせて回転と下降(上昇)をおこないます。

頸椎の前弯角度と輪状軟骨
頸椎の前弯角度と輪状軟骨

輪状軟骨の屈曲伸展が声帯の張力と関連していることは以前にも書きましたが、これが頸椎の前弯と連動していることは、気管や輪状軟骨の調整が難しい中で、我々が得意とする頸椎の調整が役に立つことを示唆しています。

症例:低い声で声が震える

ソプラノ歌手をしていた方で、歌の時は比較的声が出るようになったが、地声で声がかすれる

地声でのかすれは、今回の場合、低い声における声帯の機能障害ということが予想できます。

この低い声を出すときに、先ほど説明した輪状軟骨(および甲状軟骨)の下降が起こります。

今回の場合は、この下降時に輪状軟骨もともに屈曲してしまい、声帯の張力が減少し、発声時に声が震えてしまうと仮定し、頸椎の調整をしながら発声させることで適切な前弯を探していきました。

通常、輪状軟骨は第6頸椎に位置すると言われていますが、今回は、第7頸椎の伸展を作ることで最も綺麗な声が出るようになりました。

個人差がある治療ポイントを見つけるためにも、顎関節や舌の動き、頭の動き、そして全身のバランスと様々な角度で検証し治療を進める必要がありますので今回のようにピタッと声が出るポイントを見つけられるとは限りませんが、少しでも良い結果が出るようお力添えできれば幸いです

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