学童期の股関節の痛みと詰まり 仙腸関節障害

股関節のインピンジメント股関節インピンジメント
股関節のインピンジメント

臨床スポーツ医学の8月号が「疲労骨折を克服する〜予防から最新の保存療法戦略まで〜」という題で出ており、最近学童期のアスリートも多く紹介されるため現在読んでいます。

骨盤部疲労骨折の部分で、ランニングの恥骨下枝疲労骨折についてpositive standing signと難治性の鼠径部痛について簡単な記載がありました。

ちょうど今、そのpositive standing signの症状を抱える学生がすぐに改善したので、局所解剖を復習していると頃でした。

引用論文のリンクはこちら
Pelvic stress fractures in long distance runners

その学生は、3年ほど股関節の詰まりと踏み込みの際の力が入らないという症状に悩み、ランナー専門と言われるような治療院を10箇所くらい回ったが良くならなかったそうです。中には日本代表関連の治療院もあったそうです。

うちに来てまだ3回の治療ですが、最初に話していた動作時の問題はほとんど改善したので、これからパフォーマスを上げていく段階に必要な知識を研究誌から学びがてら、症例報告していきたいと思います。

症例:長距離選手

症例:大学生 陸上部 男性
主訴:左股関節の屈曲時の詰まり、接地の際に足の外に体重が乗ってしまう、うまく蹴れない、患側の左足が長く感じる

いわゆる「ぬけぬけ病」というイップスと「グロインペイン」を患っています。

ランニングの動作でいえば、遊脚時に左股関節前面から外側にかけて詰まり、立脚期においては外側重心で衝撃を股関節の外側で受けてしまうといった症状です。

たったまま片足立をして、もう片方の足を屈曲して、体幹を屈みながら靴を履くような動作を、冒頭でお話しした”positive standing sign”といい、こちらもそもそも足が持ち上がらないというテスト陽性を示していました。

治療直後から詰まりは1回目の治療で10→3、2回目で10→0、ただまだ最終可動域のエンドフィールが硬くもう少し治療を続ける予定です。

触診をすれば症状のまま体に現れており、その通りに対応すればすぐに変化が出てきました。少しずつ精度が増してきましたが、最近難儀する症例も多く、復習しながら現在うまく行っていない方に対する検討も行なっていきたいと思います。

触診結果通りに治療をしていたので、セミナー受講されている方からすれば、ひねりがなく勉強にならないかと思いますが、触診結果と治療についてまとめていきます。

触診と治療:

仙腸関節の内方変位→これによって寛骨臼が後捻するためインピンジメントを起こします。

仙腸関節の内方変位を改善すると股関節の屈曲が85度から100度に改善。詰まりもだいぶ抜けます。

下の動画は、ゴルフにおける股関節のインピンジメントですが、この状態と同じ現象が起きていました。

骨盤の左傾→これによって左足は長く感じます。接地時から左足が長くなったポジションで取るため蹴りの床反力も使えません。また骨盤の左傾が強くなればなるほど、脊柱の左側弯も動員するため重心は外側へと移動を始めてしまいます。

骨盤の左傾は仙腸関節の調整に加えて上部腰椎の左側弯(L2/3の右椎間関節の狭小)があるため、第2腰椎を左外方から内方へとモビリゼーションを行います。

これによって左接地時の外側重心も改善でき、抱えていた症状はすぐにきました。

その他に、足の舟状骨や楔状骨の外旋変位による内側縦アーチの増加と横アーチの減少を起こしていました。おそらくこれは、足の外側へと重心が移動させられたことによる二次的なアーチの変化と予測して最初のうちは触らず、重心が内側により始めてから治療を開始しました。

実際に2回目の時に「靴紐の締め付けで足の甲が痛む」という情報もあり、こちらも触診結果通りでした。

今回の症例は外反母趾ではないですが、楔状骨の回旋と横アーチについては下記の動画でイメージを掴んでください

ランニングなどのように繰り返しの動作を永遠繰り返す競技は、体の異常としてはごく僅かでも症状を起こすような場合もあります。

しかし、患ってから長く経過すればその分だけ蓄積したストレスも多く、体にしっかりと現れてきますので、触診をすれば大体わかります。

以前作ったランニングと動作分析について最後に動画を載せておきます。

骨盤部疲労骨折に関する図書を読んで

冒頭でお話しした、臨床スポーツ医学2023年の7月号「疲労骨折を克服するー予防から最新の保存療法戦略までー」の骨盤部疲労骨折のところで、”発生要因は練習量の増加、練習環境の変化、女性アスリートでは無月経などが要因になると言われている”、と書かれています。

また”片脚支持を繰り返すスポーツ活動での予防は、左右の仙腸関節と恥骨結合の動きが重要であり、荷重応力を一点に集中させずに分散できる良好な骨盤帯機能を維持することが重要であると考える””骨盤帯は全身のどこかになんらかの機能不全があるとその影響を受ける。そのため骨盤帯以外の部位に発生する””痛みのない機能不全””を早期に発見し改善することが重要となる・・・・・・・ ”とある。

今まで徒手療法家たちが切磋琢磨に磨いてきた技術が「医学的常識」になりつつあり、勉強のモチベーションにつながりました。

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