今回と同じ”胸郭”に関係あるブログはこちら
医療関係者はこちらのアメリカのオステオパシー(徒手療法)の資料をみるととても勉強になりますよ。
まえがき
コロナウイルスによる肺炎の懸念はますます高まっており、どのテレビ局も放送時間を割いて注意喚起をしています。
私自身は学生時代の肺炎のトラウマから、日々のニュースでコロナウイルスによる肺炎の症状を見聞きする度に、学生の頃に肺炎で死にかけた事をフラッシュバックしています。
息を吸っても肺に酸素が取り込まれなかったあの時の辛い思いは、今私自身がこうして医療従事者としての人生を歩むきっかけとなっているので、今一度、この場で何ができるのかを見つめ直す機会ともなっています。
※東京都港区にある「にしむら治療院」もさいたま市にある「アギトス鍼灸整骨院」も衛生管理を徹底し、リスク管理を最大限に行いながら最小限の診療を続けております。
各治療院の対策についてはそれぞれのホームページからご確認ください
にしむら治療院ホームページ
アギトス鍼灸整骨院ホームページ
私は学生時代、肺炎によって低酸素状態となり緊急搬送され治療を受けたことがあります。
小児喘息の持病があり、通常よりも呼吸機能が弱かったことが、軽い肺炎でも私にとってはとても酷い重篤な事態となっていました。
症状が改善し、退院する時に、今後も肺炎など呼吸器系の疾患で心配しないようにいくつかのアドバイスを教えて頂いたことを今でも思い出します。
- 健康なうちに、肺活量を上げるためにトレーニングをすること(例えば、水泳やマラソン)
- 胸式の呼吸から腹式呼吸を活用する(男性は腹式呼吸の方が強い割合で機能すると言われています)
- 寒冷時、気管支を刺激しないように鼻呼吸をすること(口呼吸だと冷たい空気がそのまま気管支を通り抜け、刺激することで気管支が狭くなる)
この留意点は、健康な方も肺炎になった方も意識しておいてほしい点です。
その後医療従事者になる道を選び、いろんな専門書物を読みあさったことで、様々な徒手療法(手技)やエクササイズで呼吸機能を改善させることを学びました。
そういった知識と経験は、
肺癌を患い、その手術によって片方の肺の機能が弱くなり、着替えることも休み休み呼吸を整えなければままならない方の治療にも活かすことができています。
手術や疾患によって落ちてしまった呼吸機能の改善だけでなく、
マラソンを行っている一般ランナーやトップアスリートのコンディショニングにも活かすことができています。
幸い昨年は、世界陸上にも選手を送り出したり、テニスでは高校生日本選手権で優勝まで導くことができました。
今思うと、きっかけは学生時代の肺炎の経験だったことを思い出します。
さて、本題に進みます。
呼吸筋機能解剖学

肺は自らによって膨らんだり、しぼんだりすることはできず、肋骨に覆われた胸郭と横隔膜と呼ばれる筋肉によって、受動的に膨らまされ、肺に酸素が入る仕組みになっています。
その胸郭の動きは、背骨と肋骨の関節の構造によって幾つかの特徴があります。
その特徴に合わせた治療法を選択することで、肺に病を患っている方も、スポーツ選手も状態をより良いものにとすることができます。
まず、
上部肋骨(第一肋骨から第5または第6肋骨)までは、肋骨の前方に付着する胸骨が起き上がるようなポンプの柄に例えられる運動をします。

背骨(椎骨)と肋骨の関節である、「肋椎関節」をてこにして胸骨が持ち上がります。
下部肋骨は、それに対してバケツの柄のような運動をします。


上部肋骨が前後に広がるの対して、下部肋骨は主に横の幅が広がります。
肺の機能が障害されている側の胸郭において、上部の脊椎は伸展(反らす)の制限、下部の脊椎においては側屈の制限があると、胸郭がうまく広がらず酸素が肺の中に取り込まれにくくなります。
症例:80代 男性
症状 :
肺がん手術後に起こっている息切れ疲労倦怠感、腰痛、足のだるさ(足が持ち上がらない)
検査:
胸郭を触診し、呼吸時の肋骨を触ってみると、手術をした左の胸郭(実際には左の下葉を手術で除去)があまり膨らんでいません。
手術をした側なので手術痕による組織の癒着も考えられます。
肋骨1つ1つの可動性を検査
第6肋骨と第5肋骨で段差ができており、その肋骨を調べると、
第5肋骨:左屈変位
第6肋骨:屈曲変位

↑この屈曲変位も側屈変位も胸郭が広がりにくくなる現象なので、この治療で呼吸は深くできるようになります。
側屈の治療の仕方を紹介した動画はこちらです。
ご高齢になられますので骨折にも気をつけなければなりません。
今回は、座ったまま体幹を支えるような治療で少しずつ関節の動きを取り戻していきました。
補足

今回は胸郭の動きである肋骨についてお話ししましたが、”横隔膜”に注目して考えると頸椎の調整も必要になります。
横隔膜を支配する横隔神経は、第3頸神経から出てくるため、頸椎の調整が必要なことがあります。
頸椎の調整については下の動画の1″44秒くらいから登場しますのでご参照ください。
まえがきでもご説明したようにマラソンランナーや水泳選手においてもこの呼吸機能を鍛えることは1つのテーマでもあります。
私自身もトップアスリートのケアに携わってきた中で、小さな改善の積み重ねが昨年の世界陸上に選手を送り出すような結果にも繋がりましたので、ぜひスポーツを嗜む方にも意識してほしいことです。