肩のインピンジメントと手のグリップ力低下 クライミング

クライミング症例 肋鎖症候群頸椎症・椎間板症
クライミング症例 肋鎖症候群

最近は、手首や肘の障害を主訴に来られる方が増えてきました。

以前は、肩や腰の症状がメインで、肘や手も痛むのでそちらもといった随伴症状のような形でしたが、最近は手や肘の症状を主訴として来院される方も多い。

日常生活でも肘の痛みは負担となるのだが、スポーツにおいては競技生命を絶たれるほど深刻な問題となります。

最近はスポーツ障害が多いためか、肘の痛みを主訴とされる方が多いのもそのためかもしれません。

一般の方であれば、肘にしても手にしても、日常生活に直結する日常動作での痛みを訴える方が多く、早く改善できた時の感動は大きい。

今回は、デスクワークの仕草とクライミングの動作が重なって起きていた肩肘手の障害についてまとめていきたいと思います。

クライミング動作と必要な検査法

クライミング動作に必要な能力といえば、リーチとグリップでしょう。

できるだけ遠いところに手を伸ばすためには、単純に肘を伸ばすだけでなく、肩甲骨を外側への動きがより大切になります。

つまり必要な検査は、胸鎖関節と肩鎖関節そして肘関節です。

ある目標物に手を伸ばす際の、胸鎖関節・肩鎖関節・肘関節そして脊柱と肩関節、これらの連動を分析してどの関節の動きが悪いのかを探って検査治療していく必要があります。

またグリップ力も、どの角度が一番弱くなるのかを評価する必要があるため、単純な握力だけでなく、腕を様々な角度において検査しなければなりません。

手の位置とグリップ力

症例:肩の痛み・ホールド力の低下

40代 男性

クライミング時の肩の痛みとホールド力の低下を訴えて来院されました。

肩を水平に上げた(外転)際、100度近くで一番痛くなり、それより上とそれより下で痛みが緩和していく、いわゆるpainful arcサインでした。

そして指の筋力も肩の症状の出現する角度で低下しています。

Painful arc サインが出れば、おそらくこの状態では肩の腱板損傷をほとんどの人が疑うかと思います。

では、肩の安定を保てば良いかといえば、そう単純ではありません。

というのもクライミングのように腕を遠くに伸ばすという仕草は、解剖学的に良い腕の上げ方とは異なるため、今回の腱板損傷のように肩の安定化を促すような対応は、肩のリーチを短くするようになるため、パフォーマンスを下げる行為へと繋がってしまいます。

リーチを確保しつつ、肩の動きのリズムを整わせることが大切です。

触診とその評価

肩甲骨の触診:右側(患側)上方回旋と下制

ここで気をつけなければならないのが、肩甲骨の上方回旋と下制があるのはとても不思議な現象です。

正常の解剖学であれば、肩甲骨の上方回旋・下方回旋は肩鎖関節つまり肩甲骨が鎖骨に対して回転することになります。

そして肩甲骨の挙上と下制は胸鎖関節で行われます。

外転・外旋時の鎖骨の動きの検査法

つまり、肩鎖関節で上方回旋し、胸鎖関節で下制していたということになります。

ただ基本的には、上方回旋と挙上がセットでの動きですので、今回の場合、鎖骨と肩甲骨がバラバラに動いているという違和感のある状態です。

実際に治療を進めていてわかったのは、肩甲骨は下制していたのが異常で、上方回旋は代償運動だということが最終結果でわかることになります。

脊柱の触診:第1・第2・第3肋骨の上方偏位・第4肋骨下方偏位

肩の高さは肋骨の体幹部分で右が高く、肩甲骨は左が高いというギャップが生じていました。

次に必要なのは、脊柱の右側が上がっているのが異常なのか、何か悪いところがあって代償的に右側を上げているのかを判断していかなければなりません。

体幹の可動域は右側屈で柔らかく、左側屈で硬い、つまり右肋骨の上方偏位は代償によるものだというのがわかります。

触診した結果を3Dモデリングしました

治療計画

体幹の左側屈制限の治療:第4胸椎(第4肋骨)、第9胸椎

肩甲骨の下制(挙上制限)

インピンジメントは鎖骨の下制によるものと、Th4の右下方変位(モデリングの青色の椎骨)によって肩のリズムが崩れていたものと考えれます。

グリップ力の低下は、肋骨の上方偏位と鎖骨の下方偏位(肩甲骨の下制)によって起こっていた肋鎖症候群だということも上記の治療を行った後、代償的に起こっていた肋骨の上方偏位も自然と改善し、肋鎖の間隙も解消されたため、肘手の強張りも取れました。

クライミング症例 肋鎖症候群
クライミング症例 肋鎖症候群

3Dモデリングした後に別角度から肋鎖を見ると明らかに狭くなっているので触診と症状は一致していそうです。

鎖骨と第一肋骨の触診 肋鎖間隙の触診

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