ランニングコンディショニング 動力学変換の異常

動力学変換 説明画像
動力学変換 説明画像

スポーツ障害やスポーツにおける不調(イップス)だけに限らず、腰痛や膝の痛みなど運動器疾患を治すために必要な共通概念に「動力学変換」というものを知らないといけないと私は思っています。

動力学変換について理解する前に、そもそものスポーツとは何かについて考える必要があります。

走るや投げる、打つにしても、射的の様な指をただ動かすだけのスポーツであっても、共通するのは、自分の体をどう動かして、物や人に対してどの様な力を加えたのか、と言い換えることができます。

それは日常生活で話すや食べる、歩く、のも同様です。

日常生活については、ひとまずおいて、

例えば、水泳は、頭の方向へ進む競技ですし、ランニングは胸の方向へと進む競技です。

こういった進む方向が違う競技ですが、筋肉や関節において使う動きや筋肉は全く同じです。

何が違うでしょうか?

違いは、実際に身体の中と外にかかる力の方向です。

これを私は、機能神経学・機能運動学的の用語を用いて「動力学変換の違い」と言っています。

動力学変換とは

パソコンのマウスを動かすとイメージしやすいかと思います。

手が及ぼした動きに合わせて、効果器である画面上のカーソルが動きます。

手をどれだけ動かせば、カーソルがどれだけ動くのかを感覚で分かることで、目的までふらつくことなくカーソルを合わせにいくことができます。

この様に、力を加えた情報から実際に行われる運動へと変換されることを動力学変換と呼びます。

スポーツと動力学変換

実際の運動に戻ります。

体つきはほとんど同じなのに、高くジャンプできる人がいたり、早く走る人がいるのは、いかに「自分の体から生んだ力」を「実際の及ぼした力」に無駄なく変換できるかにかかってきます。

同じ体格で、レッグプレスのマシーンで200kg上げられる人が2人いても、走る速さは違います。

それを人は「運動神経が良い」「センスがある」と言うかもしれません。

私は、これまでに不調で困っていたトップ選手たちの治療を行ってきてずっと抱いていた疑問、「運動神経」「センス」って具体的になんだろうかと。

今だと具体的な差を理解しています。

運動神経もセンスもあった人が何故か同じ様に動けなくなり、ちょっとした変化で再び世界の頂点へと辿り着いた経験から、この「運動神経も、センスも動力学変換がいかに効率的か」に代弁できると思っています。

フォームと動力学変換

選手によっては、自身の不調をフォームの違いを何度も比べて修正して改善した人もいるかもしれません。

しかし、動力学変換の異常が起こっている方は、外見にはわからないため、フォームの様に「どう動いたか」ではなく、「どれくらい力を加えられたか」に目を向けなければならず、それは言葉の様に目を向けて分かるものではなく、触れてみて力のやりとりを感じて初めてわかります。

現在ランニングの治療中の方に説明した資料をもとに少し概要を説明していきます。

動力学変換の異常(症例をもとに)

膝の伸展時の骨盤の傾斜

「走る」行為は、最初にお話しした様に、「前方に体を移動させていく行為」です。

ちなみに歩行と走行の違いは、両足が浮いている時間があるかないかで定義されています。

体を前方に移動させるというのは、接地している足よりも体幹が前にいく動きなので、体幹が後ろに倒れている場合と前に倒れている場合で、膝の伸展時に受ける動力学変換は変化します。

【膝の伸展=上に上がる】なので膝が伸びると骨盤は、下から上に突き上がる力を受けます。

この力を前方に進む力にどれだけ効率よく変換するかが問題です。

「体を前に倒れる様にして走る」が理想と言われるのは、このことになります。

ほとんどの方が実践していると思われるかもしれませんが、大切なのは「いかに効率よく変換するか」というワードです。

例えば、猫背になる様に前に屈む様な力で前に倒れる場合、前方かつ下方へと体幹は移動するため、前に進む力はやや下に向くため、足で上に向かう力も加えなければなりません。

逆に顎が上がり、腰を反らしすぎると、上に力が逃げるため、前に向かう力の効率は下がっていきます。

センスのある、運動神経の良い選手ほど前に進む力に全てと言えるほど変換がうまくできています。

実際には、足関節の角度に応じて、膝の伸展する力自体が下から上ではなく、斜め後ろから斜め前に向かうため、足関節の問題も含めて見ていく必要があります。

膝の伸展と股関節の柔軟性

骨盤の角度が前方への力に影響することがわかり、骨盤を良い位置(良い角度)に保てれば速く走れるようになると思うかもしれません。

ここまではランニングに詳しい方であれば知っている方はたくさんいらっしゃると思います。

次に紹介するのが、見た目ではわからない重要な点です。

骨盤を前傾にセットする際に、例えば、大腿四頭筋(大腿直筋)を利用したとします。

大腿直筋は膝の伸筋かつ股関節の屈筋であるため、膝を伸ばす力を発揮する際に骨盤は前傾しようという力を持つことになります。

すると膝の伸展時に、股関節の伸展がうまく促されず、上半身は後ろへと押される力を受けてしまいます。

ランニングにおいて言えば、前に進むためには、体幹の前傾を保ちつつ、膝の伸展の動きに合わせて股関節を伸展していくことが大切になります。

膝の伸展と大腿の伸展と足関節の底屈(伸展)を合わせてトリプルエクステンションと呼び、高く飛ぶためにトリプルエクステンションができていなければならないと言われます。

そして走るためにもトリプルエクステンションが必要なため、ハイジャンプをして鍛えようとする方が多いのですが、上に上がるのと前に進むのは全く異なるため、トリプルエクステンション後に不調を起こすランナーをかなり多く見てきています。

ここがトレーニングが実際のパフォーマンスに活かせないまま不調に至る原因なのです。

動力学変換とコンディショニング

当院では、その人が競技に合わせて求める動きに対して、どのタイミングでどの動きが必要か、そして、その動きの抵抗がどこかにないかを見て治療するポイントと方向を決めていきます。

競技レベルが高くなればなるほど、1センチ、1度の違いの治療となっていくため、細かい治療となりますので、マッサージで体をほぐすということも、トレーニングで筋力強化や動きを覚えることもしません。

少しでも早く、少しでも高く、少しでも強くなるための一手を探ることをやっています。

少しでも不調に悩む、パフォーマンスアップに悩む方のお力になれれば幸いです。

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