デスクワークと坐骨神経痛 仙腸関節と坐骨の歪み

坐骨神経の障害の例腰・股関節の障害
坐骨神経の障害の例

坐骨神経痛や腰痛・股関節痛は当院に来院される方で最も多い症状の1つです。

自信を持って治療に取り組んではいるものの、残念ながらうまくいかない方もいます。

今回、試行錯誤の末良くなった方の症例を元に、複数の要素が重なり合っている難しい状態がどんな状態なのかをご紹介します。

坐骨神経痛の原因

坐骨神経を障害する原因は、大きく分けて2箇所あります。

  • ①腰椎部での障害
  • ②骨盤部での障害

もっと細かく分けると、例えば、

障害部位障害原因
①腰椎部上位椎骨の下方変位による圧迫下位椎骨の上方変位による圧迫
下位椎骨の下方変位による神経の牽引上位椎骨の上方変位による神経の牽引
上位椎骨の後方回旋による下位椎骨の圧迫下位椎骨の前方回旋による下位椎骨での牽引
上位椎骨の前方回旋による下位椎骨の牽引下位椎骨の後方回旋による下位椎骨での圧迫
などなど言い方はさておき、椎骨の変位の数だけ神経の障害が起こりえます。
②骨盤部仙骨のストレスによるもの(回旋)仙骨のストレスによるもの(側屈)
仙骨のストレスによるもの(前屈)仙骨のストレスによるもの(後屈)
腸骨のストレスによるもの(回旋)腸骨のストレスによるもの(側屈)
腸骨のストレスによるもの(前屈)腸骨のストレスによるもの(後屈)
坐骨のストレスによるもの(回旋)坐骨のストレスによるもの(回旋)
坐骨のストレスによるもの(前屈)坐骨のストレスによるもの(後屈)
などなど、腸骨と坐骨は同じ寛骨の一部なので、どちらかがストレスを受ければ同様に変位します
坐骨神経の障害部位とその原因

さらに詳細を触れるようになるともっと具体的な神経の障害となっていきます。

仙腸関節の変位と坐骨神経障害
仙腸関節の変位と坐骨神経障害

症例 現病歴

40代 男性:左臀部から太ももにかけて張りと痛みがある。特に長く座っているときに症状を強く感じる

特に症状が出るきっかけというのはないが、趣味でランニングをしているものの、足が重くて走りづらくなってきた感はあった。

走っていると症状が緩解するが、走り始めや、ストレッチの時には左のお尻から足の張りを感じ、足を前に降った時にはもも裏が突っ張る。

前屈をしても左のお尻に違和感と痺れのような痛みを感じる。

座ると左のお尻にしこりにような筋肉の張りがあり、前は長時間座った時に感じていたが、今は座るとすぐに違和感が出る。

検査 触診

坐骨神経痛様の症状を呈しているので、ただの筋肉の問題なのか、神経痛なのかを検査してみると

検査内容
SLR(坐骨神経伸展テスト)45°↓(もも裏から踵まで張り)70°
股関節可動域:屈曲95°(前面に詰まり感)120°
股関節可動域:外転45°45°
股関節可動域:内転
股関節可動域:内旋n.p
股関節可動域:外旋n.p
トーマステスト(腸腰筋)右屈曲で左前面に張りn.p
理学検査
触診内容触診結果
骨盤上後腸骨棘の内方変位左寛骨の後傾仙骨の右回旋変位(右後方)
仙骨の左側屈変位
腰椎腰部の左側弯L4左側方変位L5左下方変位
L1左前上方変位
胸椎Th5~Th10左後方変位
脊柱・骨盤の触診

考察と治療1回目

座っている時に、明らかに左臀部の上に載っている様な座り方だったので、仙骨の左下方と腰椎の左側弯の治療を行いました。

仙骨の治療とともにSLRの可動域は改善し、深く前屈するときの張り感だけになりました。

腰部の左側弯の改善とともに、上部腰椎の調整を行って、トーマステストもやや改善。

予想通り改善が見られたので、1回目の治療は終了。

2回目来院時の症状

気持ちよく長距離を走れたとおっしゃっており、筋肉痛も残らず調子が良いという話でした。

唯一気になるとすれば、座っている時の臀部のしこり。

触らなければなんとなく、張ってるかなという程度まで改善しているので、これでも気にはならないが、長いこと座って仕事すると出てきそうな感覚とおっしゃっていました。

検査 触診 (1回目との比較)

確かに、骨盤の左側屈変位が改善しているため、左のお尻に体重がかかる様子は改善していましたが、坐骨周囲を触診すると、確かに左の坐骨周囲が硬くなっています。

左骨盤の細かい触診をしていくとこう言った状態でした。

坐骨神経障害の一例
坐骨神経障害の一例

当初は、画像右下の方な、骨盤の左傾斜があり、そもそもが左の方に体重が乗って、

坐骨神経を障害していると読んでいましたが、実際には、それに加えて、
「左寛骨の右屈」が生じており、坐骨結節が坐骨神経にストレスを与えていたのでした。

1回目の治療で骨盤全体の左屈は改善したものの、左の寛骨の側屈と回旋は取れずに残っていたため、まだスッキリとしこりが取れたという感覚にはなっていなかった様です。

治療を難しくしている点

触診に慣れてくると、一点を触って得た情報から、別のポイントがどういう状態かを予測することが可能になってくるため、少ない触診で全体像を見て取れる様になってきます。

しかし、身体には、関節は数多く存在しており、骨を引っ張る筋肉もあらゆる方向から付着しているため、予測通りに状態がなっているとは限らないものです。

症状の変化を通して気づく部分もありますが、なかなか良くならない方にもこう言った、錯覚から起こる診断ミスというのは多く存在しています。

今回は、段階をおいて改善している例でしたが、良くならない方にも留意点として今後の診療に生かしていきたいと思います。

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