「つま先立ちができない」という症状の場合、腰部脊柱管狭窄症などの腰の神経の圧迫によって起こる脛骨神経麻痺が疑われます。
“脛骨神経”はあまり一般の方には馴染みのない神経かもしれませんが、総腓骨神経と一緒になって坐骨神経を構成していますので、「坐骨神経の一部」とするとイメージしやすいかもしれません。
この脛骨神経麻痺は、疫学的には総腓骨神経麻痺よりもかなり稀と言われています。
それは、総腓骨神経が膝の近くにある腓骨頭を迂回し、かなり浅いところを走るため膝の怪我や、足首のギプス固定の際に圧迫を受けたりと比較的発生頻度が多くなるためです。
ただ当院のような、怪我の直後に拝見することは少なく、腰痛での来院が多い環境からすると、脛骨神経の障害は比較的多い症状です。
今回は、症例について動画での説明もしてありますが、こちらで細かく症例について検討していきたいと思います。
動画でもご紹介しましたので参考にしていただけたらと思います。
症例:つま先立ちができない 脛骨神経麻痺
70代 男性
ゴルフの練習が原因なのかは定かではないが、割と頻繁にゴルフの練習には行っていた。
腰痛自体は特にものすごく辛くなるという印象はないまま、足に違和感が出始め、気づくとつま先立ちができず、歩行も知人に指摘されるような異常歩行を来すようになっていた。
つま先立ちができなくなって数ヶ月後に当院に来院。
まだ発症から比較的早かったこともあり、ふくらはぎの筋萎縮が軽度ではあった。
筋力テストでは、重力に対しての足首の運動は可能、そして抵抗運動に対しては、比較的筋力は保たれているもの左右差は強い。
明らかに脛骨神経麻痺でした。
MRIを初診時持参いただけたので、画像から腰椎のどのレベルでの神経障害かを分析できました。



症状を聞かずに画像を見ると明らかにL4/5の椎間板の変性が強いのが特徴的です。
しかし症状がある側の矢状面の断面図を見ると、患側側のL5/S1の椎間孔は全く隙間がない状態で、椎間板変性の強かったはずのL4/5はわずかだが椎間孔の隙間があり、そこを神経が通り抜けているのがわかります。
L4/5に関しては健側の方が椎間孔の隙間がない。
ここから予測できる障害を受けている神経根はL5/S1であることが予測できます。
もしそこであれば、腰椎のモビライゼーションで椎間孔をひらけば筋力が上がるはずです。
最初のうちはごくわずかな筋力アップではあったが、1ヶ月、そして2ヶ月と経過するごとに爪先立ちが徐々にできるようになってきました。
爪先立ちがだんだんとできるようになっていく様子を動画で拝見できます。(3;09)
今回の経験での学び
まずは画像を拝見した時に、これは徒手療法でも改善できる範疇なのか、と少し躊躇しました。
実際に、すでに受診していた町の整形外科だけでなく、手術を実際に行っているドクターのいる病院への受診もしてもらいました。
しかし逆に、外科医のドクターからも、「神経がもうすでに機能を失っているので手術をしても改善しない」と返されてしまいました。
そんな状況ではありましたが、とりあえず数回で改善できそうな変化があるか見てみましょうと始まりました。
まず学びの1点目:腰痛のない神経障害に対しては、外科の先生も強気になれないのだなと感じました。
続いて、学びというよりは、成長したことを実感したポイントです。
痛みの改善とは違って明らかに神経の障害によって症状が出ている場合、やはり変化が出るまでに時間がかかってしまいます。
患者様も、そしてこちら側も忍耐力がいる症状でしたが、無事に改善が見られて良かったです。
今回の症例のポイントは、症状をきたしいたところの1つ上位のレベルでは反対側の椎間孔が狭くなっていたところを最初から把握できていたことだと思います。
なぜなら、患側の椎間孔を開こうとする場合、「側屈」する力が加わりやすいです。
今回のケースの場合、この側屈する力を利用した際に、上位の腰椎にも力がかかってしまうと、下手をすれば健側にも何かしらの症状をきたしてしまう可能性があるからです。
前もって危険性を把握していたので、上手に患側だけに力をかけることを意識できました。
治療院詳細
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