FAI 大腿骨寛骨臼インピンジメント

AIIS Type1、Type2 股関節インピンジメント
AIIS Type1、Type2

何度も症例報告している病態ですが、今回は詳細な画像データがあるので少々細かく説明していきたいと思います。

FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)は股関節を構成する寛骨臼と大腿骨の変性による運動障害及び疼痛を訴えます。

寛骨臼の変性によるものをPincer型、大腿骨の変性によるものをCAM型、そしてその両方の三種類に大別されます。

変性した骨を削ることで改善するため、関節鏡手術の進化が著しい現在では手術の成績が格段と上がっている疾患の一つです。

関節鏡手術の進歩からこの病態に対してより理解が進んでいます。
そういった外科の知見が、徒手療法においても活かせる点が多く、今回の症例ではそこを踏まえて説明していきたいと思います。

今回の症例は、アスリートのFAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)手術後に起こったグロインペイン(股関節前面の痛みについてです。

まずはFAIについて症例の画像を見ながら復習していきます。

参考図書:股関節鏡視下手術の適応と限界 整形・災害外科 2023年2月号 金原出版株式会社
     臨床スポーツ医学 鼠径部痛と臀部痛の包括的アプローチ 2022年6月号 文光堂

股関節鏡視下手術の適応と限界 整形・災害外科 2023年2月号 金原出版株式会社
股関節鏡視下手術の適応と限界 整形・災害外科 2023年2月号 金原出版株式会社
臨床スポーツ医学 鼠径部痛と臀部痛の包括的アプローチ 2022年6月号 文光堂
臨床スポーツ医学 鼠径部痛と臀部痛の包括的アプローチ 2022年6月号 文光堂

AIISの形態異常

下前腸骨棘AIISは、股関節を形成する寛骨臼のすぐ上にあり、大腿四頭筋の一つである大腿直筋が付着し、サッカーなど股関節の屈曲と膝の伸展を繰り返すスポーツや、股関節の可動域の限界を多用するクラシックバレエなどにおいては、剥離骨折なども多く、変性を起こしその結果、股関節の運動に障害を起こすことがあります。

寛骨臼の変性による下前腸骨棘AIISの形態的異常は大腿骨寛骨臼インピンジメントFAIに影響を与える場合があります。

AIISの手術のリスクとしては、AIISの下端に腸骨大腿靭帯や関節包が付着しているため、深く切除することによって股関節の不安定が増す危険性があるため、どれくらい切除するかがポイントとなっています。

AIISのタイプ分類についてご紹介します。

参考論文”Anterior Inferior Iliac Spine Morphology Correlates With Hip Range of Motion: A Classification System and Dynamic Model”

AIISの形態異常と分類
AIISの形態異常と分類

この画像は私がモデリングしたものですが、左からType1,Type2,Type3と分かれており、ポイントは「AIISが寛骨臼にどれくらい入り込むか」です。

真ん中のType2は寛骨臼にAIISの隆起が繋がっており、Type3は更に深く寛骨臼と接続しています。

AIIS Type1、Type2
AIIS Type1、Type2

この画像は実際に当院に通われていた方のCT画像ですが、写真左の左寛骨はAIISが寛骨臼にそのまま繋がっておりType2、右の写真の右寛骨臼は、若干寛骨臼との間に隙間が若干ですがありますのでType1ともType2とも言えるような状況です。診断的にはType2となっていました。

症例:Pincer型

前述しましたが、寛骨臼大腿インピンジメントはPincer型と呼ばれる寛骨臼側の変性とCAM型と呼ばれる大腿骨側の変性、そしてその両方の場合があり、下前腸骨棘AIISの形態異常も見られるこの画像からPincer型が存在していることがわかります。

そして左右両側ともPincer型で、CAM型は右側、今回来院時の患側で強く隆起しています。

crossoverサイン Pincer型
crossoverサイン Pincer型

FAIを起こしやすいレントゲン的特徴

レントゲンでは寛骨臼の前縁と後縁が透けて見ることができるため、その時に後縁と前縁(CT画像の黄色ライン)がクロスしているのをcrossoverサインと言ってインピンジメントになりやすい状態の1つです。

ただ、レントゲンにおいてのcrossoverサインは偽陽性も多いためレントゲンの撮影状況によって見え方が変わり曖昧だとも言われています。

今回、前述したCT画像からもその状態が推測できます。画面左の黄色の前縁は、画面右側の青のラインよりもより深く大腿骨頭に被さっているのがわかるかと思います。

これは先天的に寛骨臼が後ろに捩れていなければ仙腸関節の機能異常、もしくは腰椎の回旋変位によって起こっているため、徒手療法で改善できるポイントです。

寛骨臼の後稔 crossoverサイン
寛骨臼の後稔 crossoverサイン

症例:CAM型

CAM型
CAM型

これは大腿骨を内側から見ている状態ですが、右側の大腿骨頭から、大腿骨の頸部にくびれてくるのが通常ですが、画像の上面の部分のくびれがなくなっており(pistol grip様変形)、この厚みが出る骨の変性があるものをCAM型と言います。

つまり今回の症例は、Pincer型とCAM型の複合型ということがわかります。

症例:FAI大腿骨寛骨臼インピンジメント Pincer型 CAM型

症例はゴルファーで、股関節の内旋を強く起こすため、変性した大腿骨の前面と寛骨臼で衝突が起きています。

手術によって変性した部分を取り除いていますが、手術後のリハビリから痛みを感じ、歩行時の痛みから松葉杖をつくような状態になってしまいました。

手術から1ヶ月経っていて悪化しているため、手術前から当院に通っていたこともあり再度来院されました。

まずMRIやレントゲンで股関節の傾向を確認してみます。

先ほど紹介した画像ですが、坐骨結節と大腿骨の距離を比較すると、画像の右側の方が坐骨と太ももの距離が広いことが確認できます。

これは骨盤の前傾が右側の方が強いという証拠です。

よく一般的にいう「骨盤が前傾している」というのは左右差を比較した表現ではなく、今回の場合は、右と左で寛骨の角度が異なっている、つまり仙腸関節の左右差があることを指しています。

仙腸関節は左右差が強い方が症状を起こしやすいと言われているので、今回の問題でも考慮することで股関節症状の緩和も期待できます。

坐骨の前方可動性をモーションパルペーション(動きの触診)で検査すると患側の右側で機能制限を起こしています。

坐骨のモビリゼーションで前方への動きを作ると歩行時の痛みがかなり軽減しました。

もう一つは腰椎です。

ゴルフ特有でもありますが、右側屈が安静時にも残っており、腰椎の右側が狭くなっています。

今回、特に第3腰椎と第2腰椎の間が強く側屈しているため、大腿神経の絞扼神経障害も起こっていそうです。

上部腰椎の狭小をモビリゼーションで離開するとさらに股関節の機能が改善します。

1週間後の2回目の来院では、杖なしで来院されかなり改善していました。

実は今回の2点の治療ポイントは、今まで股関節の痛みをコントロールしていた時からよく起こっていた部分でした。

手術後にその点の機能が制限されたまま、ただ運動療法を行なったために、機能改善どころか、負担が増してグロインペインを発症したようです。

手術の効果もグロインペインの解消とともに現れ始めているので、手術自体がうまくいかなかったわけではなく、その後の機能改善なく運動をしたことによってリハビリがうまくいかなかっただけのようです。

競技復帰までもう少しサポートを続けていきたいと思います。

FAI手術後における徒手療法の役割

今回の症例はだいぶ経過よいのですが、FAIの方が手術後に必要なことを最後にご説明したいと思います。

下記の動画は私が作成した股関節インピンジメントを起こす関節内運動の異常について説明したものです。

このように転がりと滑りが障害された結果インピンジメントを起こすのですが、これを繰り返すことで骨に変性が起こり、通常では衝突しない正常可動域の中で大腿骨が寛骨臼にぶつかってしまいます。

そういった中でも可動域を出そうとするとどの様なことが起こるかというと、micro-instabilityと呼ばれる股関節の不安定性を起こすことになります。

大腿骨が寛骨臼の前方部分で衝突することで、ここに運動の軸が作られ、結果大腿骨頭は下方へと押し下げられます。

この押し下げられた、いわゆる亜脱臼の動きを手術後に取り戻すことも徒手療法では行いやすい治療となります。

筋肉の収縮はパターン化されているため再度教育することで正常な運動を取り戻すのですが、まず他動運動で動きを再現させてあげることで運動を行いやすくなりますので、今回の経過が良いのもそういったことが効果を出している様です。

治療院詳細

にしむら治療院
東京都港区芝5−27-5山田ビル503
駐車場1台
Tel:03-6435-2437
website:https://hari.space/index.html
web予約:https://hari.space/contact.html


アギトス鍼灸整骨院
さいたま市中央区下落合1013-1スピカビル2階
駐車場4台
Tel:048-708-2011
website:https://www.agitos.jp/index.html
web予約:https://www.agitos.jp/contact.html

その他、大阪も毎月伺っています。ご希望の方はにしむら治療院の方からお問合せください

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