バレエ・ダンス 動きの意図と肩の痛み

バレエの写真上腕二頭筋腱鞘炎
バレエの写真artist, movement, action and motion concept. Looks weightless.

「肩の痛み」は一般的に「こうすると治る」という規則が存在していますが、その規則から外れた、いわゆるイレギュラーな治療が必要となる場合があります。

今回は、バレエダンサーの治療を通じて、動きの意図によって規則性という先入観を捨てなければならない特異的な場合についてご紹介します。

現病歴

20代 女性:バレエダンサー

今までに膝を痛めたり、腰を痛めたりと様々な怪我を経験されてきては克服してきたけれども、ここ数ヶ月は右肩の痛みが改善せず、当院に来院にいたります。

右肩は、腕をあげることはできるが、コクっというクリック音があり、痛みもあります。

健側と比べて腕は重く、踊っているうちに疲労を感じるという症状もありました。

検査・触診右肩のクリック音

クリック音は、いわゆるpainful arcの間で起こるのでインピンジメント症候群といえます。

手のひらを下にした状態での肩を上げると痛みがより強くなるため肘の問題も考えられました。

肘の可動性検査:

屈曲 flex120度115度
伸展 ext+5度+5度
回内 pron.p
回外 spin.pn.p
回内位での屈曲n.p100度
回内位での伸展n.p−5度
肘の可動域検査

確かに肘の治療(特に回内)も必要そうです。

体幹の可動域はバレエダンサーならではなの柔軟性があり、一見大きな問題はないように思えますが、

  • Th8右屈制限(左下方変位・右上方変位)
  • Th4左屈制限(右下方変位・左上方変位)

※下肢の可動域も治療を行いましたが説明は割愛させていただきます。

考察と治療1

肩の外転動作(右)では通常、体幹の左屈が含まれるため、肘の治療に加えて、Th4の左屈制限や、腰椎の左屈制限の治療などを行って、肩の可動域を見ました。

確かに初動の肩の軽さは出て疲労感は抜けた気がすると訴えていましたが、クリック音と痛みは変わらずにあります。

2回目の来院でもまた同様な症状を訴えられましたので、少し見方を変える必要があります。

今回の気づき

実際に踊っている場面での症状を確認してみることにしました。

我々が知っている肩の外転動作とは異なり、鎖骨を下げ、肩を撫で下ろして、腕だけを高く挙げています。

つまり、バレエにおいての肩の外転の運動連鎖は、一般の肩の動きとは異なり、手を長く見せるための特徴があったのです。

一般の右肩における外転動作時の運動連鎖体幹の左屈+肩甲骨の上方回旋+上腕骨の外転と外旋+頸椎と上部胸椎の右屈
バレエ・今回の症例の方の必要となる運動連鎖体幹の右屈+肩甲骨の上方回旋+上腕骨の外転と外旋+頸椎と上部胸椎の左屈
肩の動きに伴う運動連鎖

考察と治療2

Th8の右屈制限の治療に加え、他に肩をなで下ろしにくくしている鎖骨や肩甲骨と肋骨の調整を肘の治療に加えて行ってみたところかなり改善しました。

腕を上げる動作が、一般の方が利用する「物をとる」や「遠くに投げる」という行為を目的としたものではなく、今回のバレエやダンスのように、「表現する」ための場合には、実際にその動きを行っていただくことが治療のポイントを把握するためにはとても重要です。

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