足の震えによる歩行障害 不随意運動に対する治療 東京都港区にしむら治療院/さいたま市アギトス鍼灸整骨院

筋収縮についてリハビリの論文や生理学の研究を読み漁っていると、生理学で習っていることと現場で得られている研究論文とに差が生じることは珍しいことではありません。

理由の1つとして、生理学の研究が多い時期が1930-1980年代に行われており、猫を中心とした動物実験によるものです。

除脳手術をしていたり麻酔下で行っている研究のため実際人間の体とは異なるのも無理はありません。

ですのでどれだけ論文を読み漁ろうと最終は相手の体を見ながら試行錯誤をするしかありません。

実際の臨床で得た治療効果を再度論文たちと照らし合わせて手の中で起こっていた現象を神経メカニズムを眺めるように検証してきます。


症例:

男性

60代 左足の震え

震え方はももが痙攣するように震えることもあれば足関節がチックするようにピクピク震えることもあり、それぞれの作用機序ももしかしたら異なるのかもしれません。

左足が右足に触れた際にピクッと筋痙攣が起きたり、歩行時や立位での姿勢維持の際にガクッと足の力が抜け、グラグラと足が痙攣してしまいます。

持続時間は長くて数分ですが、発作時は座って休まずにはいられません。

脳神経・神経内科・心療内科による異常は見当たりませんでした。


神経生理学:上位運動ニューロン

まずは、筋収縮のメカニズムのおさらいです。

随意運動の際には、
大脳皮質の運動野→延髄錐体(交叉)→外側皮質脊髄路
が基本となります。

今回の症例のように、脳神経疾患が検査により疑われない場合は、上位運動ニューロンの部分の詳細は一度置いておいてもいいかと思います。

なので重要なのは、緊張力のセンサーの役割をしている『筋紡錘』がキーワードかと思います。

錐体路
錐体路

神経生理学:随意運動

随意運動時には、α運動ニューロンとγ運動ニューロンによるα-γ収縮連関と呼ばれる筋収縮の増強が効率よく行えるようになっています。

今回は不随意運動である痙攣ですが、歩行時や立位時に足の力がガクッと抜けて痙攣が起こる、つまり随意運動にも支障が出てきているとも捉えることができます。

α運動ニューロンによる障害であれば、神経内科による筋電図での異常も見つかるでしょうが、何かきっかけがあっての異常であれば検査時に何も問題が出ないのも無理はありません。

α運動ニューロンとγ運動ニューロンにおける違いといえば、伝導速度がγの方が遅い点です。

今回の症例も、足関節の随意運動(底背屈)をしてもらうと、だんだんと左足の方が遅れてきます。

疲労で足が動かなくなってくるというのとは違うのでγ運動ニューロンが影響があるのかもしれません。

α-γ収縮連関

おすすめ参考図書:ネッター 神経


神経生理学:γ運動ニューロン

γ運動ニューロンは、筋の伸長度合いのセンサーとして機能する筋紡錘の錘内筋線維の両端(極部)を支配し、センサーの感度を調整しています。

γ運動ニューロンに異常が出ると、伸長反射が減弱したり、筋収縮時に持続的な収縮ができず筋力が落ちてしまいます。

随意運動時における筋収縮の遅れと、震えるという不随意運動を考えると筋紡錘事態の問題とも考えられます。


神経生理学:筋紡錘

筋の張力を感知し、筋肉の長さを一定にするための作用がある筋紡錘は反射の作用と関連しています。

有名なのは、膝蓋腱反射、腱を叩くことで伸ばされた筋肉は筋紡錘にあるIa線維を刺激し、同一筋肉を収縮させる「伸長反射」というメカニズム

確かにアキレス腱を伸ばす(ヒラメ筋を伸ばす)と足首はかなり抵抗して硬かったのでこの伸長反射は亢進していました。

ここで感覚的な重要なポイントは、
アキレス腱を伸ばした瞬間の抵抗と持続的に伸ばした時の緊張が神経生理学的に異なる作用があるということです。

伸ばした瞬間、これは動的γ運動ニューロンによる筋肉の長さに変化がある場合に反応する(相動性伸長反射)ものです。この障害を痙縮。
そして持続的に筋の長さを一定にしようとする反応(姿勢の維持)は静的γ運動ニューロンによって対応(持続性伸長反射亢進)しており、障害を受けると固縮といった関節の拘縮を起こします。

私の手の感覚で言えば、相動性伸長反射よりも持続性伸長反射がより亢進していたように感じました。

実際の症状と照らし合わせても、姿勢を保持していたところで急に力が抜けるという現象は、持続性伸長反射が急に解除されたようなものですので、この部分はかなり症状と関連が強そうです。

筋紡錘・腱紡錘の反応

おすすめ参考図書:標準生理学


神経生理学:ゴルジ腱反射

もう1つ今回注目して治療を行ったのが、ゴルジ腱器官です。

強い筋収縮が起こったり、外力によって腱が強く引き伸ばされた際に腱や筋肉の損傷を防ぐために同一筋を弛緩さえる機能です。

ガクッと力が抜けると言っていた場所はももの前面と話していたので、四頭筋の腱に多く存在するゴルジ腱器官が亢進して、大腿四頭筋の筋収縮を抑制したのかもしれません。

しかし、ここでも姿勢を維持していた際に起こっている現象ですので、姿勢維持に強い筋収縮があったとも考えられます。

ゴルジ腱器官が亢進していたのか、もしくは筋収縮が亢進していたのかどちらかかもしれません。


治療:

筋肉や腱の長さを左右で比較しながら筋肉や腱の調整を行い、感覚神経の障害はなかったので、運動ニューロンの調整として脊椎や骨盤の調整を行いました。

伸長反射や筋収縮の様子を逐一検査しながら治療を行い、約3ヶ月くらいでほぼ発作は出なくなりました。

今回のように脳疾患がない場合はより考察は難しくなりますが、脳疾患が下っている場合、例えばパーキンソン病や脳梗塞による麻痺などにもこの神経反射を理解しながら治療を行うとかなり良い効果が現れますのでただ感覚に頼るだけでなく、しっかり神経メカニズムを理解して治療を続けたいと思います。


安心安全な優しい施術

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パーキンソン病と誤嚥性肺炎 顎の震え

主に運動機能の障害、例えば歩行障害や震え(振戦)を起こすパーキンソン病についてです。

誤嚥性肺炎を患うことが多いのは、喉や口元を支配している筋肉の失調が原因の1つだと考えられています。

今回の症例はそんな誤嚥と関連の高い、「口元の震え」についてです。

頭から顎、そして腕にかけての震えが止まった方をご紹介します。


症例

男性:
10数年前、手の震えから始まったパーキンソン病の症状。
薬を増量しながらコントロールを図るも震えは治らず、次第に顎や頭まで震え始める。
夜中、震えによって歯と歯がカタカタと音を鳴らすようになり睡眠も思うように取れない。

症状:
左腕の震えが一番強いが、次に強いのが頭。
頭の揺れは振幅が左>右

これまでの経過:
パーキンソン病治療で有名な治療院を全国回るも効果が見られず、専門の病院で薬を増量しながら震えのコントローつを続ける。
薬の副作用(認知症のリスクがあるとドクターからも言われている)から他の治療を求められており、紹介によって当院に来院される。

パーキンソン病だからと言って特別な治療はないので、位置覚や振動覚といった深部感覚である関節受容器の過敏な状態を抑えることを目的に行うと説明した上で治療を行いました。
震えが強い部分周囲の異常から治療ポイントを考えるのが有効なケースが多いので、今回もそのように考えています。

顎と頭の震えが強いということでしたので、頭蓋と頚椎の触診をし、調整を試みました。
その場で次第に震えは治り、数回の治療で完全に止まりました。
体調が悪くなるとまた震えが大きくなりますが治療でまた止まるのでコントロールできています。

ポイントは頭の傾きでした。
顎関節はもともと頭の横への傾きに対して敏感です。(下顎が重力に逆らって上顎にぶら下がっているため)
頭が何らかの理由で傾くと、顎関節に異常なシグナルが発生し筋肉が痙攣しました。

前回記載した「顎関節の機能解剖」を見ていただければわかりやすいと思います。

パーキンソン病の震えや動作の不調でお困りの方は是非一度ご相談ください

 


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