痺れ・痺れ感の原因は①神経 ②筋肉(トリガーポイント)③関節(関節受容器)の三つが主な原因で、最近だとその他に④空間認識がCRPSなどの難治性の疼痛過敏に影響していると研究が発表されています。
それらはどれも影響しあっているため、どこが起点となっているのか、どこを先に治療するべきなのかを把握しなければなりません。
そこで当院で利用しているのがTherapy Localizationセラピーローカリゼーションと呼ばれる、治療部位の判定に使われる触診法です。
治療に適しているポイントに手を触れると症状が軽減したり、筋力がアップしたり好転反応がすぐに出ます。
力の方向や力加減、治療のタイミングによって刻々と変化するため、今一番適した施術場所はどこなのかを探すのにとても有効な手段です。
まずは、左肩から手の痺れ、特に手の指(小指薬指だったり、親指人差し指だったり移動する)を患っていた方の症例検討を含めて再度”痺れ”について考えてみたいと思います。
”腕からのの痺れを訴えていて、手の先の痺れは日によって場所が変わる”
この場合、真っ先に疑うのは頚椎の問題、つまり手に向かう神経の問題として考えられます。
それなりの年齢の方であれば、頚椎の変形があるためほとんどの方で頚椎症や、頚椎椎間板症、変形性頚椎症という診断が下されます。
なのに首の治療を受けても一向に良くならない場合、次はどんなことを考えなければならないでしょうか?
頚椎にTherapy Localizationを用いても、痺れが増強するため、今は首の治療を行うタイミングではないことがわかりました。
次はどこを触診しなければならないか。
今回のように広範囲の痺れをきたしている場合、トリガーポイントと呼ばれる筋肉の過緊張(攣縮)から起こる『痺れ感』(神経から起こっているわけではないので痺れ感とします)が考えられます。
よく言われる腕に向かう痺れ感をきたす筋肉といえば、肩甲骨周囲の筋肉です(例えば肩甲下筋、棘下筋)
確かに、過緊張を起こしており、肩の可動域にも影響をきたしているため、トリガーポイントも有効かもしれません。
しかし、肩甲骨周囲の筋肉に触れても痺れが再現そして増強します。
なのでこれも今治療する部位ではありません。
もう一つの関節受容器の異常による痺れ感だあった場合、肘関節と手関節の過緊張や機能異常が考えられます。
肘関節の橈骨が過緊張を起こしていたため、軽く牽引を行って見るが、今までと同様に痺れが増強。
尺骨肘頭は内方上方変位しているため、肘頭のモビリゼーションを試みるが思うような効果は得られなかった。
手・腕・肩の痺れの場合、だいたい今までやってみたところで変化が見られますが、今回は全て痺れが増強するサインが出ているため、うまくいきません。
最後に残った手関節を触診してみます。
尺骨茎状突起が背側に緊張を起こし、手首が背屈制限を起こしています。
背屈させながら尺骨をリリースすると、その瞬間から小指・薬師の痺れが消失します。
指を動かすのは鈍い感触がまだあります。

尺骨の背側偏位
そのあと痺れは母指側に3本付近が気になり、舟状骨の外転変位・内転制限、母子中手骨と大菱形骨の外転制限がありました。
実際に親指を動かすのに自覚する制限はあるかと尋ねると、伸展できません。
大菱形骨・第一中手骨をリリースすると指の伸展の痛みのなくなり、手の痺れが消失しました。

舟状骨の偏位

大菱形骨の偏位
そのあと、最初に触って痺れが増強した首や腰を触ると痺れは増強せず、むしろ指の動きの鈍さが改善されやっと施術できる状態になりました。
Therapy localizaitonでは、当初増悪サインを出していた頚椎や腰椎も、動きが軽くなるといった寛解ポイントのサインが現れましたので手の治療の後にはいつもの全体治療の効果を出すことができました。
このように主観的な症状である”痺れ”の治療は治療ポイントを見つけるのが難しく、1回目でそれを発見できるかは問診が鍵となっていたりします。
今回も振り返れば、手に負担がかかる仕事をしていることや手に急激な力がかかることをした翌日から症状が悪化していることから、手の問題が多く関連していることにすぐに気づけていたかもしれません。
長らく痺れの症状でお困りの方に対して、少しでも早く解決に向かいますようお力添えできれば幸いです。
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にしむら治療院院長
さいたま市中央区下落合1013-1スピカビル201
アギトス鍼灸整骨院 代表
西村 公典